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脳死の意味は?回復の見込み・植物状態との違い・死亡判定の理由について解説
脳死とは脳の働きがなくなった状態
脳死とは、その名称のとおり、脳が死んでいる状態です。つまり、脳がまったく機能していません。
この記事では、脳死の回復の見込み、植物状態との違い、死亡判定の理由について解説します。
脳全体の機能が失われている
脳死は、脳幹を含めて脳全体の機能が失われている状態です。
イギリスでは、脳幹の機能が失われているだけでも「脳死」としています。しかし、欧米諸国をはじめとする多くの国々では、脳幹を含め脳全体の機能が失われた状態を「脳死」と断定し、脳死を「人の死」として認めています。
全脳死と脳幹死がある
脳死は「全脳死」「脳幹死」に分けられます。
- 全脳死:※大脳、※小脳、※脳幹といった脳のすべてが機能していない。
- 脳幹死:全脳死の前段階。脳幹のみが機能を失っている状態だが、やがては大脳も機能を失い、全脳死に至る。
※大脳:知覚、記憶、判断、運動を命ずる機能、心の動きを司る。
※小脳:運動や姿勢を調整する機能を司る。
※脳幹:呼吸、循環機能、意識などを司る。
脳死の回復の見込み
脳死の回復の見込みについて解説します。
結論から言いますと、回復は見込めません。たとえ、人工呼吸器を使ったとしても、数日くらいしかもたないと言われています。
回復は見込めない
脳死からの回復は見込めません。
脳死となっても、人工呼吸器によって心臓は動きますが、脳幹の機能がストップしている状態です。脳幹は呼吸、循環機能、意識といった生きるのに必要な機能を司るところです。
脳死は、このように生きるために必要な機能が動いていない状態です。自力で呼吸ができず、意識もありません。
人工呼吸器を使ってもあと数日
医療機関では、脳死患者に人工呼吸器を提供します。しかし、患者の心臓は自発的に動くことはありません。
人工呼吸器を使ったとしても、あと数日の命と考えられます。その日数は人によっても異なりますが、長くは生きられません。
植物状態との違い
脳死と植物状態の違いは、脳幹が機能しているか否かです。
植物状態の場合は、脳幹が機能しているので、自力で呼吸しています。そのため、回復の見込みもあると考えられます。
脳死 | 植物状態 | |
脳幹の機能 | × | 〇 |
自力呼吸 | × | 〇 |
回復の見込み | × | 〇 |
脳死は脳幹を含めた脳全体が機能しない状態
脳死は、脳幹も含めた脳全体の機能がストップしている状態です。延命処置のためには、人工呼吸器が必要です。
人工呼吸器を外せば、脳死患者は亡くなってしまいます。少しでも長く生きていてほしいと思う場合は、人工呼吸器を外せません。
植物状態の場合、脳幹は機能している
上記で説明しました脳死と違い、植物状態の場合は脳幹が一部でも機能しています。人によっては、小脳が機能している場合もあります。
脳幹が働いていれば、脳が心臓に命令して呼吸したり、血液を循環させたりできます。つまり、生きていくために必要な機能を維持しています。
脳死は自力で呼吸していない
脳死の場合は、自力で呼吸しているわけではありません。呼吸を司る脳幹の機能が働いていないので、人工的に呼吸しているのみです。
したがって、脳死患者の命綱は人工呼吸器です。
植物状態の場合自力で呼吸している
脳死と異なり、植物状態の場合は、自力で呼吸しています。つまり、人工呼吸器はつけていません。
高度な意識障害ともいわれ、まれに刺激に反応することもあります。そのため、意識がまったくなく、自力呼吸ができない脳死とは異なります。
回復の見込みがあるのは植物状態
植物状態の場合は、意識が戻って回復する可能性もあります。脳幹の一部が機能していることの影響によるものと考えられます。
また、ケースバイケースですが、意識が戻って何年も生存できる場合もあります。
脳死は死亡と判定できる理由
脳死=死亡という脳死判定ができる理由は、法律の定められている5項目や回復の見込み、死亡判定後の臓器移植などが挙げられます。
法律で決まっている
法の基準が脳死判定を行う理由の一つと考えられます。脳死判定は、※定められた5項目によって行われます。
移植を前提としているケースでは、かなり慎重に行われます。脳神経外科医と移植医療とは関係のない二人以上の医師による判定です。1度判定してから、6時間おいてもう1度、計2回行われます。2回目の脳死判定時刻が死亡時刻です。
こうした脳死による死亡者は、全体のうち1%と言われています。
※定められた5項目
1.昏睡状態が深いこと
2.瞳孔の状態
3.脳幹反射が消失している
4.脳はが平坦になっている
5.自発呼吸ができない
脳死は回復の見込みがない
上述しましたように、脳死に回復は見込めないことも、脳死判定の理由の一つと思われます。脳死は、たとえ手術をしたり、人工呼吸器で延命治療を続けたりしても、数日で亡くなるものです。
そのため、もしも家族が脳死となったら、どこまで延命治療を行うか選択しなければいけません。
延命治療の選択
仮に患者が元気なうちに、いざというときの処置について聞いていた、何らかの形で本人の意思が示されていた場合は、それに従うことになります。
たとえば、日頃本人が「もしも意識不明になることがあっても、延命治療はしてほしくない。」と言っていた、エンディングノートに「もしも延命治療が必要になった場合はそのまま静かに逝かせてほしい。」と書かれていたケースなどが考えられます。
しかし、患者の意思は確認できないケースも少なくありません。その場合は、家族が日頃の患者の考え方などを思い出し、選択することになります。
手術も人工呼吸器も費用がかかります。ケースバイケースですが、人工呼吸器使用後の死亡退院ですと、3割自己負担で1日8~10万円くらいかかるものです。手術を受けるなど、治療方法によっては、これ以上かかる場合もあります。
死亡判定後は臓器移植ができる
脳死の死亡判定は、臓器移植のためにも必要です。脳死判定されたら、臓器移植ができるからです。臓器移植法においては、臓器移植する場合のみに限り、脳死は「人の死」とされます。
仮に患者本人が臓器提供を希望していた場合、または本人の意思が確認できなくても家族が希望すれば、移植コーディネーターにより説明を受けることができます。ただし、説明のみを聞いて断ることも可能です。
移植を受ける患者は、日本臓器移植ネットワークに登録されている方です。その中から、移植される臓器にふさわしい患者が、医学的基準で選ばれます。
まとめ:脳死は回復の見込みのない脳全体の死・死亡判定後は臓器移植が可能
脳死は回復の見込めない脳全体の死です。脳幹も機能していないため、人工呼吸器で延命治療しても数日しかもちません。
脳幹が機能している植物状態とは異なります。植物状態の場合は、回復する場合も考えられます。
また、脳死と判定されたら、家族が延命治療の選択をしなければなりません。
そして、臓器移植が可能ですが、本人の意思があるか否かによります。本人の意思がなくても、家族の意思で提供できますが、慎重な判断が必要です。
思いがけない事故で脳死に至る場合も考えられます。日頃から、臓器提供、延命延命処置については家族と話しておきたいものです。または、エンディングノートに自分なりの意思を記しておくのもおすすめです。
私事ですが、父が不慮の事故で脳死に至りました。家族として、後悔のない選択が重要であること、日ごろの会話の大切さを身に染みて感じております。