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献体とは?|意味・注意点・「臓器提供」との違いを解説
献体とは解剖実習や研究用に遺体を寄贈すること
献体とは、大学病院や医学部、歯学部や研究機関において行われる解剖実習や研究のために自身の遺体を無償で寄贈することです。そのためには生前の「献体登録」と、死後に献体を実行してくれる「家族の同意」が不可欠です。一方、献体に似たものとして「臓器提供」があるので、献体との違いについても説明していきます。
また、この記事では基本的に献体を希望されるご本人向けに解説していきますが、残されるご家族にとっても故人の尊い意思を最大限尊重するために、献体とは何か、そしてどのようにすすめるのかを理解しておくのは大切ですので、ぜひチェックしておきましょう。
献体の意味と関連用語をチェック
「献体」とは、医学・歯学などの研究・解剖実習のため、ひいては医療技術の発展のために、自身の死後にその遺体を無償で寄贈することです。献体後に行われる解剖は「正常解剖」と呼ばれ、解剖学の教授の指導のもと医学生の人体構造の理解のために用いられます。また、献体として自身の遺体を寄贈するためには「献体登録」をする必要があります。
献体は英語で「body donation」
「献体」を名詞として用いる場合は「body donation」と連語で、「献体する」という動詞として用いる場合は「遺体(body)を寄付(donate)する」と分けて使います。
例文1:献体によって医学は進歩した。
The Body Donation contributed to Medical progress.
例文2:祖父の遺体は東京大学に献体された。
My Grandfather’s body was donated to the Tokyo University.
献体登録とは
「献体登録」とは、献体先として希望する医療機関や献体篤志団体に、「自身の死後、その遺体を解剖実習や研究用に寄贈すること」を約束して登録することです。
ところが、本人が登録を済ませ、献体する明確な意思を示したとしても、本人の独りよがりでは実現しません。最終的に必要になるのは「家族の同意」です。
献体登録は大学の医療系学部と献体篤志団体でできる
献体登録は大学の医学部や歯学部、関連医療機関、献体篤志団体などの登録団体でできます。手続きとしては、以下の3ステップ。
①献体を希望する登録団体から申込書を取り寄せる
②必要事項の記入と捺印し返送
③後日、登録証(会員証)が郵送されてくれば登録完了
これらを生前に済ませておくことで、献体をする明確な意思表示にもなります。
献体篤志団体とは
「献体篤志団体」、別名「献体の会」は、全国に約60団体あり、献体を希望する個人と大学や医療研究機関との橋渡しや窓口としての役割を担っています。また、献体に関する意義と正しい理解を広める活動を行っています。
死亡から献体そして返還までの流れ
では実際に献体はどのように行われるのでしょうか。ここでは本人死亡直後から献体として寄贈され、そして家族のもとへ遺体が変換されるところまでの流れを説明します。
献体には必ず家族の同意が必要
献体登録は献体に必要な手続きですが、それでも献体が実行されない時があります。それは残された「家族が反対した場合」です。仮に1人でも家族が反対する場合は献体は実施されません。
献体をするにあたって必要となる「家族の同意」は、同居にかかわらず両親、配偶者、兄弟姉妹、子供、姪や甥※にまで及びます。献体登録は生前に行うもので、実際の献体は数ヶ月後、数年後、何十年後になるかもしれません。必ず家族の理解と同意を得るようにしましょう。
遺体が移送されるタイミングは通夜・葬儀の後
献体登録をした本人が死亡した場合、登録証や会員証に記載されている連絡先に家族が連絡をします。通夜か葬儀が行われたのち、遺体は献体先へと移送されます。通夜後に移送された場合も、葬儀は遺体なしで行うことはできます。
遺体が戻ってくるのはおよそ1年以上先
献体として寄贈された遺体が家族のもとへ返還されるのは献体後1年後以上先になります。献体後、遺体は火葬され遺骨となった状態で返還されます。返還までの期間は通常1年程度ですが、長い場合は3年以上かかることもあるので、返還期間が長くなる場合があることも家族に理解を得るようにしましょう。
臓器提供との違いは「遺体を処置するタイミング」
献体と混同されがちなのが臓器提供です。臓器提供は、臓器提供希望者が「脳死」や「心肺停止」によって死亡判定がなされた場合、その遺体の心臓や肝臓などの臓器や角膜や骨、血管などの組織を希望する患者へと移植することです。
故人の遺体にメスを入れることは献体と臓器提供とで変わりはありませんが、実は実施のタイミングが大きく異なります。ここでは献体と臓器提供の違いを説明します。
臓器提供は速やかに実行される
臓器提供は時間との勝負です。死後、遺体の組織は変質を始めます。時間が経ってしまえば本人が臓器提供を希望していても臓器移植自体が不可能となるため、実現されません。例えば眼球の場合は死後6時間以内に処置をしなければならず、摘出にはその他の臓器の場合も含めて平均3〜5時間程度かかります。事前の準備はもちろんですが、家族への同意も速やかな処置のために必要なので、忘れずに行っておきましょう。
臓器提供後は通夜や葬儀までにすぐ返還される
処置後、遺体は可能な限り綺麗な状態になるよう処置されます。例えば眼球摘出の場合には義眼が入れられます。処置後、遺族のもとへ返還され、通夜や葬儀を通常通りに行うことができます。献体は葬儀後に行いますが、臓器提供は死後速やかに行われ、葬儀までには返還されているのが大きな違いです。
臓器提供の手続きと家族の同意
臓器提供も献体同様に本人よる意思表示を兼ねた手続きと家族の同意が必要です。速やかに臓器提供を実現するためにも手続きを完了し家族の同意を獲得しておきましょう。
ドナーカードの準備を忘れずに
通称「ドナーカード」、正式名称は「臓器提供意思表示カード」。臓器提供のためにはこの「ドナーカード」が必要となります。「ドナーカード」は各都道府県、各市区町村の役場、ハローワーク、警察署などで手に入ります。カードを手に入れたら必要事項を記入し、お財布などに入れて常に携帯するか、健康保険証に貼るタイプであれば貼付しておきましょう。
「組織」の提供には家族の同意だけで可能
臓器提供は本人が脳死状態か心肺停止状態になった後、家族の同意のうえで実行されます。ただし、臓器提供の中には家族の同意だけで実行できるものがあります。基本的には本人の意思表示と家族の同意が必須条件ですが、提供するものの中で「組織」に分類されるものは家族の同意だけで臓器提供が可能です。「組織」には皮膚、心臓弁、血管、耳小骨、気管、そして骨が含まれます。
まとめ:献体や臓器提供には家族の同意が不可欠
献体は葬儀終了後に家族の同意のうえで行われ、1年以上家族のもとへ遺体が戻らない一方で、臓器提供は死後速やかに同意の確認と処置が行われ、遺体は葬儀までの間にきれいな状態で戻されます。献体をするにせよ、臓器提供をするにせよ、その違いを把握し、手続きを済ませ、そして何より残される家族の理解を必ず得ることが大切です。
参考
『葬儀・法要・相続の手続きとしきたりの全てがわかる大辞典』清水勝美監修、永岡書店2017年
『突然の葬儀マニュアル』冠婚葬祭研究委員会編、土屋書店2014年。
▶︎熊本白菊会:家族の範囲について
http://www.medphas.kumamoto-u.ac.jp/shiragiku/sub13.html
▶︎公益社団法人日本臓器移植ネットワーク:臓器摘出までの時間について
https://www.jotnw.or.jp/explanation/02/04/
▶︎公益社団法人日本臓器移植ネットワーク:臓器提供意思表示カードについて