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葬制(そうせい)とは?火葬や土葬だけじゃない世界の葬制と方法

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目次

葬制(そうせい)とは人が亡くなた後の習慣や儀礼の総称

葬制とは、人が亡くなった後の慣習や儀礼の総称で、遺体の処理にまつわる儀礼や、葬送、葬儀、墓制度などを広く含みます。

日本では遺体を火葬し、遺骨を墓に埋葬する方法が定着していますが、世界にはそれ以外の葬制が行われている地域が数多くあります。

この記事では、世界で現在も行われている葬制やそれぞれの意義、行われている地域などについて解説していきます。

火葬とは

火葬は仏教やヒンドゥー教では主流となっている葬制で、日本では99%が火葬です。遺体は専用の火葬場で焼却するのが一般的です。

日本では自治体や民間が運営する火葬場に遺体を移送し、棺ごと専用の火葬炉に入れて焼却します。

遺骨は持ち帰りを義務付けている自治体が多いものの、西日本の一部では遺骨を焼き切って処分してくれるところもあります。持ち帰った遺骨は墓や永代供養墓地などに納めるケースがほとんどですが、近年では遺骨を粉砕し、海への散骨を希望する人も増えています。

ヒンドゥー教を信仰するインドやインドネシアのバリ島では、焼却した遺骨を川や海に流して弔います。火葬場は屋外にあることが多く、遺体の焼却も公開で行っています。そのため、一般の観光客でも火葬の様子を垣間見ることができます。

火葬の意義や目的

火葬は魂の浄化という宗教的な意味の他に、社会の現状に合わせて広まった葬制です。公衆衛生の点で土葬に比べて衛生的なことや、遺骨にすることで墓のスペースを小さくできるなどが、その理由です。

日本では家ごとに墓を持つ慣習が根付いていますが、墓に複数の遺体を埋葬するためには広いスペースが必要です。しかし、土地の限られている都市部では無理があります。

火葬をして遺骨だけにするからこそ、限られた墓のスペースでも複数の人を埋葬することができるのです。仏教が火葬を推奨していることも、日本に火葬が普及した理由と言えるでしょう。

火葬が行われる地域

日本の他に、仏教徒の多いタイやミャンマー、ヒンドゥー教徒の多いインドやインドネシアのバリ島などで火葬が行われています。

日本では当たり前の火葬ですが、世界で火葬をする地域はそう多くはありません。

カトリックを信仰するフランスやイタリア、スペイン、火葬がタブーとされるイスラム圏の国々では土葬が主流です。

また、儒教を信仰する中国や韓国でも土葬が推奨されていますが、人口やお墓の問題などから近年は火葬を行う人も増えてきています。

例外的にイギリスでは火葬が70%を超えています。これはキリスト教の中でも合理的なプロテスタントを信仰する人が多く、高額な土葬費用を負担に感じる人が増えていることも関係しているようです。

土葬とは

土葬とは、遺体をそのまま土に埋める葬制です。遺体を布でくるんだり、棺に入れたりして埋葬するのが一般的です。キリスト教やイスラム教、儒教などは、土葬を推奨しています。

日本でも明治初期までは土葬が主流で、一時的に火葬が禁止された時代もありました。遺体を桶型の棺に座らせて入れる地方と、現在のような平型の棺に遺体を横たわらせて入れる地方とがあったと言われています。

キリスト教では死後、復活して天国に行くために肉体を残す必要があるので、土葬が一般的です。キリスト教徒の多い欧米諸国では、土葬後の遺体の腐敗を防ぐためにエンバーミングの技術も発達しています。

ただ、土葬の費用は高額なうえに、カトリック教会が火葬を認めたこともあり、最近ではより合理的な火葬を希望する人も増えています。

一方、イスラム教徒にとって火葬は地獄で炎に焼かれる姿を連想させる、もっともタブーとされる行為です。

教義によって土葬の方法も細かく定められています。死後24時間以内に土葬するのが望ましく、墓穴は2段構造。これは、最後の審判を受ける際に上半身を起こして天使の声を聞けるよう上段を空洞にするためです。

儒教では火葬は正式な祭祀(さいし)とは認められていません。祖先や年長者を敬うことを重んじる儒教では、祖先の遺体を火葬によって破壊することはタブーとされています。

儒教の信仰者が多い韓国では、国土が限られていることから火葬が増えつつあるものの、現在も土葬が主流です。

土葬の意義や目的

土葬をする地域は多く、その意義や目的は宗教の教義ごとに異なります。共通しているのは、遺体を傷つけることを嫌うという点です。

キリスト教では復活し天国に行くために体を残す必要があり、イスラム教も死後最後の審判を受ける際に肉体が必要です。また、儒教では祖先の肉体を傷つけることはタブーとされています。

一方、肉体は魂の器と考えるような宗教では火葬を推奨する傾向があるようです。

土葬が行われる地域

土葬は世界中で行われています。欧米諸国をはじめ、中東やアフリカなどのイスラム教信仰国では、一部を除き6割以上は土葬です。アジア、アフリカ、南米の国々でも土葬率は5割以上と言われています。

鳥葬とは

鳥葬は、文字通り鳥に遺体を処理させる葬制です。チベット仏教の鳥葬が有名で、鳥葬用の石台に切断した遺体を乗せ、肉食の鳥に遺体を食べさせて処理します。

チベット仏教では、遺体は魂が抜けたただの塊と考えられています。さらに、鳥に食べさせることで肉体が天へ上るともされています。そのため、中国語では天葬とも呼ばれます。

また、ゾロアスター教を信仰するインドの一部地域でも、鳥葬が行われています。ゾロアスター教発祥の地であるイランでは、かつては道端に遺体を放置してハゲワシに食べさせるか、直射日光で乾燥させた後に専用の場所に移していました。

しかし、ゾロアスター教が伝来したインドは湿度が高く、日光で遺体を乾燥させることは難しかったので、鳥葬が主流になったと言われています。

鳥葬の意義や目的

チベット仏教では遺体に対する畏怖の念はそれほど高くはありません。そのため、遺体は魂が解放された後の抜け殻として考えられています。

鳥葬の前に専門の職人が遺体を裁断し、骨も粉砕して、ハゲワシが食べやすいように準備をします。

鳥によって肉体を天に届けるという意味や、死後の肉体を捧げることで生前の殺生に報いるという意味もあります。また、現実的な問題としてチベットの高知が火葬や土葬に適さないことも鳥葬が推奨される大きな理由になっています。

樹木が育ちにくいチベット高地では火葬のための薪の確保が難しく、さらに気温が低いため土の中に微生物が少なく土葬しても遺体の分解が遅いのです。

一方、ゾロアスター教では遺体は悪魔の住処とされ忌み嫌われる存在。そのため、亡くなった当日に鳥葬を行うのがよしとされています。

なお火は信仰の象徴なので、遺体を焼くことは火を穢す行為とされています。土や水も遺体で穢すことは許されないため、土葬も水葬も行いません。

鳥葬が行われる地域

チベットには現在も1000箇所以上の鳥葬台があります。チベット以外にも、チベット仏教を信仰するブータンやネパール、インドやモンゴルの一部地域でも鳥葬が行われています。

ゾロアスター教信者のいるインドのムンバイやナヴサーリーにも、ダフマと呼ばれる鳥葬用の施設があります。

 

風葬(曝葬)とは

風葬とは遺体に特別な処理をせず、自然の環境に安置する葬制です。日本をはじめ世界中で行われてきた、もっとも原始的な葬制の一つです。曝葬(ばくそう)や空葬(くうそう)とも呼ばれます。

風葬では遺体をそのままもしくは棺に入れて、専用の場所に安置します。風葬のための小屋が建てられている地域もあれば、樹木の周囲や洞窟の中、専用の台の上などで遺体を風化させる地域もあります。

風葬で葬られる遺体は腐敗による匂いや衛生上の問題などから、人里離れた特別な場所に専用の施設を設けているのが一般的です。

風化した遺体が遺骨になってから骨を洗い(洗骨)改めて埋葬をする地域もあります。

沖縄や奄美諸島では1960年代まで風葬が行われていました。崖や洞窟などに遺体を安置して、3~7年ほど遺体を風化させ洗骨して埋葬していたようです。

インドネシアも風葬が各地で見られる国の一つです。横穴を掘った洞窟に遺体を安置して遺体が自然に風化するのを待つスラウェシ島のトラジャ族。遺体の腐敗臭を防ぐタルムニャンという香木の周囲に遺体を安置して白骨化するのを待つバリ島のトゥルニャン地区。高位についた人だけ例外的に認められる「神に成るため」の風葬を行うボルネオ島のイバン族などが知られています。

風葬の意義や目的

風葬は自然回帰の思想から、亡くなった人を自然に還すことを体現した葬制です。さらに、宗教上の遺体の捉え方や地域の事情なども関係しています。

沖縄の離島には、かつては火葬設備が整っていなかったり、土葬をするにも土地が限られていたりと、物理的な理由から風葬を選択する地域もありました。

インドネシアでは地域や民族の独自の信仰に寄るところが大きいようです。地位の高い人だけが神になるために風葬を行ってもらえる場合もあれば、遺体は魂の抜け殻と考えられていて、ただ放置している地域もあり、風葬の目的はさまざまです。

風葬が行われる地域

現在もインドネシアの一部の地域では、風葬が行われています。スラウェシ島のトラジャ族の住む地域やバリ島のトゥルニャンでは風葬を観光客向けに公開しているので、風葬の様子を垣間見ることもできます。

 

洗骨葬とは

洗骨葬とは風葬や土葬をした後に、遺骨を取り出し水や酒などで洗う葬制です。日本では沖縄と奄美諸島の風習として知られ、世界にも洗骨葬を行う地域は多々あります。風葬または土葬をして3~7年かけて白骨化した遺骨を水や酒で洗い清め、改めて埋葬するのが一般的です。

かつて沖縄では、洗骨葬では故人の近親者の男性が遺体を掘り起こし、故人の肉親の女性または長男の嫁が骨を洗うのが習わしでした。

骨から皮をはがし、残っている肉をそぎ落とし丁寧に骨を洗わねばならず、その心理的な負担は大きいものでした。戦後、女性解放の流れと火葬の普及も影響して、日本の洗骨葬の風習は減退していきました。

洗骨葬の意義と目的

洗骨葬を行う地域では、死者はそのままでは穢れた存在という思想が根底にあります。沖縄では死者は洗骨によって清められて、初めて神仏の前に出られるようになると考えられていました。

また、死者は埋葬しただけでは死霊であり、子孫に病や災いをもたらす危険な存在と考えらている国や地域もあります。そのため、洗骨葬は死霊を祖先の霊として受け入れるための、大切な儀礼なのです。

洗骨葬が行われる地域

世界では、アジア、東南アジア、オセアニア、北米の先住民族、インド諸島、アフリカなどで洗骨葬を行う地域があると言われています。また、日本でも与論島では年長者が希望して洗骨が行われることもあるようです。

 

獣葬(野葬)とは

獣葬とはケニアのマサイ族に伝わる葬制です。亡くなった人や亡くなりかけている人をサバンナに運び自然に捧げ、ライオンやハイエナなどの猛獣に食べてもらいます。遺体が残ることは不吉とされるので、猛獣をおびき寄せるために遺体に血液などを付着させ放置します。

他の葬制と決定的に異なるのは、まだ亡くなる前でも獣葬を行うという点です。もちろん植物状態などで死期が近づいていることが明らかな場合に限ってですが、鮮度の高い肉を猛獣が好むからです。亡くなる前、もしくは死後できるだけ時間を置かずに獣葬を行うようです。

獣葬の意義や目的

マサイ族にとってサバンナは恵みの大地。そこに動物たちがいるからこそ生きていけるという感謝の念があります。

そのため、自分たちが死ぬ時は、これまでいただいた恵みを自然に還し、命を循環させるという思想が根付いています。

また、火葬や土葬は文明がもたらした慣習であり、自然を破壊する行為とも考えられています。そのためマサイ族では、自然の営みにあった葬制として現在も獣葬が行われています。

獣葬が行われる地域

現在、ケニアとタンザニアの国境付近にまたがる地域に生活するマサイ族が獣葬を行うことで知られています。

 

水葬とは

水葬とは遺体や遺体を入れた棺を、川や海、湖などに沈める葬制です。舟に棺を乗せて海に流す舟葬(しゅうそう)も水葬の一種です。

インドのガンジス川の水葬がもっとも有名でしょう。基本的には火葬後、一定期間を過ぎてから遺体を川に流しますが、火葬費用を払えない人や乳幼児、妊婦などは火葬をせずそのまま流されます。

また、アメリカでも水葬は認められています。洋上で亡くなった軍人のためにアメリカ国旗をかけた棺をスロープなどで海に投下し水葬が行われる場合があります。

例外として、ウサマ・ビン・ラディン氏をアメリカ軍が殺害した際も、遺体は水葬にされたそうです。これは、氏の墓が聖地になることを防ぐためだったと言われています。

日本では水葬は認められていませんが、航海中に船員が亡くなった場合のみ例外的に水葬が認められています。その際は、死後24時間経過していることや、遺体が浮き上がらないよう措置を施して投下するなど、条件が定められています。

水葬の意義と目的

インドのヒンドゥー教では聖なるガンジス川に遺体を流すことで、生前の罪が流され、魂が救われると考えられています。火葬後もしくは遺体をそのままガンジス川に流すので、墓は存在しません。

なお、インドといえばタージマハルが有名ですが、こちらはイスラム教徒だったムガール帝国5代皇帝シャー・ジャハーンの妻ムムターズ・マハルのお墓です。

水葬が行われる地域

水葬が一般的に行われているのはインド以外では、ほとんどありません。アメリカでも水葬が許可されてはいるものの、ほとんどが土葬か火葬です。

しかし、今後はアメリカでも水葬が増える可能性があります。遺体をアルカリ加水分解し、液状処理にして海に流す葬制が注目されているのです。

墓地を確保する必要がなく、低コストで環境にも優しい方法であることや、火葬に抵抗があるキリスト教徒にとって新しい選択肢になると期待されています。

 

冷凍葬

冷凍葬はスウェーデン発祥の、新しい葬制です。死後1週間以内に遺体をマイナス18℃で凍結し、トウモロコシなどから抽出したでんぷん質で作った棺に納めます。さらにマイナス195℃の液体窒素に、棺ごと1時間浸します。

急速冷凍でもろくなった遺体は、振動を与えると短時間で粉状に。さらに専用の機械で乾燥させ、金属の詰め物などを回収してから、地中50㎝ほどに埋めます。遺骨は半年から1年でたい肥になり、自然に還るというわけです。

火も使わず、土を掘り起こす面積が少ないうえに、土に還るスピードも従来の土葬よりも短いので、地球環境に優しい葬制として注目を集めています。

冷凍葬の意義と目的

冷凍葬の目的は、人間の死が地球環境にかける負担をできるかぎり小さくすることです。エコロジーな生活が求められる今、死後もエコにという思想から生まれた新しい葬制と言えます。

とはいえ、葬制は宗教や地域の慣習と結びついていることが多く、現実的には広く受け入れられるには時間がかかるでしょう。

冷凍葬が行われる地域

スウェーデンでは実際に冷凍葬が行われています。費用は宗教上の儀礼を除いて、3万円ほどでできるようです。

 

ミイラ葬

ミイラ葬は、かつては世界中で行われていた葬制で、もっとも有名なのは古代エジプトのミイラ葬です。

古代エジプト以外にも南米アンデス地方でもミイラ葬が行われていました。内臓を取り出した遺体を乾燥させたり、特殊な薬品に浸したりして、ミイラを作っていたようです。

現在もインドネシアスラウェシ島のトラジャ族は、ミイラ葬を行っています。ここでは、遺体にホルマリンで防腐処理をしてミイラにする現代的な方法が用いられています。

ミイラ葬の意義と目的

古代エジプトでミイラ葬が行われていた理由は、来世で復活するために肉体が必要だったためです。ミイラとして遺体を残し、来世に備えることが目的だったと言われています。

一方、アンデス地方やトラジャ族のミイラ葬は、家族の死を緩やかに受け入れることが目的です。

ミイラ処理された遺体は家の中に安置され、食事や着替えも生前と同じように施されます。大切な家族を突然失う悲しみや喪失感を、ミイラとなっていく故人と共に過ごすことで癒していくのです。

また、トラジャ族はランブソロと呼ばれる葬儀を人生最大の儀礼として重要視しています。しかし、ランブソロの葬儀を行うためには高額な費用がかかるため、資金が貯まるまでは、ミイラとしてまるで生きているかのように故人を扱うのだそう。

ランブソロ後は土葬をしますが、数年に一度は掘り起こして、ミイラとなった祖先に服を着せパレードをしたりピクニックなどにでかけたりするようです。

ミイラ葬が行われる地域

現在ミイラ葬が行われている地域は、インドネシアスラウェシ島のトラジャ族だけです。

 

まとめ

世界を見渡すと、さまざまな葬制が行われていることがわかります。宗教上の教義や地域の慣習によって、葬制に対する価値観も異なります。

日本では当たり前の火葬が、他の民族にとっては残酷な葬制として考えられることもあるように、それぞれに独自の思想があるのです。

また、風葬のように原始的とも言える葬制が現存する一方で、冷凍葬のように最新技術を生かして地球環境に優しい葬制が登場しているのも興味深いですね。

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