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樒(しきみ)とは?仏教との関係や役割、榊(さかき)との違いも解説

目次

「樒」とはおもに葬儀や法要など仏教で用いられる植物のこと

「樒(しきみ)」とは、おもに葬儀や法要の場で用いられる植物。「しきび」とも読み、お墓に供えることもあります。蓮や菩提樹などと同様に、仏教ではよく見られる植物のひとつです。

樒の特徴

樒はシキミ科(あるいはマツブサ科)シキミ属の常緑樹で10cm程の高さに成長します。葉には光沢があり、春になると薄い黄色の花を咲かせます。神仏事に用いる植物として、江戸時代から庭木としても栽培されてきました。

線香の原料でもある独特で強い香り

樒の特徴のひとつに、木全体が持つ強い香りが挙げられます。樒は線香の原料にも使われており、線香独特の香りは樒由来のことが多いです。

またこの独特で強い香りから、樒は香の木(こうのき)や香の花(こうのはな)、香芝(こうしば)と呼ばれることもあります。

強い毒性があるので注意

花から根にいたるまで、樒はすべてが毒を持っているのも特徴です。「アニサチン」という猛毒成分を含んでおり、とくに実は強い毒性を持っています。

シキミは花言葉に「援助」のほか「甘い誘惑」や「猛毒」といった意味を持っていますが、それもこの毒に由来しています。

名前の由来には大きくふたつの説がある

「樒」という名前の由来については、大きくふたつの説が存在します。

ひとつめは、四季を通して緑が美しいことから「四季見(しきみ)」「四季美(しきび)」と呼ぶようになった説。

もうひとつは、その毒性から「悪しき実(あしきみ)」とされ、この「あ」がとれて「しきみ」になったとする説です。

おもにこのふたつの説がよく言われますが、他にも四季を通して芽をつける姿から「四季芽」を語源とする説や、実の形から「敷き実」に由来するなどという説も存在します。

樒と仏教の関係とは?

樒は古くから宗派を問わず、日本の仏教でよく使われる植物です。どうしてこのように仏教と深いつながりを持つようになったのか、いくつか言い伝えが存在します。

鑑真が唐から持ち込んだという言い伝え

鑑真は奈良時代、日本に仏教を広めるために中国の唐からやってきた僧です。この鑑真が、樒を日本に持ち込んだという言い伝えがあります。

仏様のいる天竺(てんじく)には、青蓮華(しょうれんげ)という花が咲くと言われています。この青蓮華に樒の花の形が似ているため、鑑真が日本に渡る際、唐から樒を持ち込んだとされているのです。

なおこの説は、江戸時代の書籍『真俗仏事編』にも記されています。

空海が修行で樒を使ったという説も

唐では、青蓮華の花は「仏様の瞳」をたとえる象徴として修行にも使われていました。平安時代初期の僧であり真言宗の開祖としても知られる弘法大師空海。彼は、修行の際にこの青蓮華の代用として、形が似ている樒を使ったと言われているのです。また樒という字に「密」が用いられているのは、「密」教とのつながりを示している、という説も存在します。

宗派によってこまかな扱いは異なる

樒は今も多くの仏事に用いられ、重要なものとして使われています。たとえば日蓮正宗では仏壇やお墓に供えるときには生花ではなく樒を使い、浄土真宗では仏壇へのお供えに、水を入れた華瓶(けびょう)に樒を挿して用いるのが基本です。

このように現代でも樒は日本の仏教と密接に関連するものの、こまかな扱いや用い方は宗派によって異なります。

「樒」と「榊」の違い

樒とよく混同されるものに、「榊(さかき)」という植物があります。どちらも宗教行事に使われる植物で美しい緑の葉を持ちますが、異なる役割を持つものです。

榊は神道でおもに用いられる植物

樒が仏式で用いられるのに対し、一般的に榊(さかき)は神道(神式)で用いられます。そのため神式の葬儀では、祭壇に榊が多く飾られます。

また樒は独特の強い香りを持ちますが、榊はほぼ無臭です。

樒を神事に用いる神社もある

基本的には、樒は仏教、榊は神式で用いられる植物です。ただし、現在でも樒を神事に用いる神社が存在します。

その代表例が、京都にある愛宕神社です。この神社では今も樒を神木とし、火よけのお守りとして用いられています。

葬儀における樒

仏教において樒はとても重要な意味を持つものです。関西地方を中心に現代も葬儀の場で樒が飾られています。

葬儀会場で飾られる

関西地方の葬儀では、葬儀会場の入り口や寺の門前に樒を飾ることがあります。これは「門樒(かどしきみ)」と一般的に呼ばれ、大きく華やかである一方、ある程度のスペースがないと設置はできません。

また門樒ではなく、「大樒(おおしきみ)」や「樒塔(しきみとう)」と呼ぶこともあります。

供花や花輪の代わりに贈られることもある

関西地方では、供花や花輪よりも門樒の方が丁寧なお供えとされています。そのため、参列者からも供花や花輪の代わりに樒を贈ることも多くあります。

祭壇の飾り

故人の遺影やお供え物を置いて故人を供養する祭壇。樒はこの祭壇の飾りにも使われます。最近では白木祭壇のほか、生花を多く使う花祭壇も増加していますが、樒はどちらの祭壇でも用いられます。

亡くなった後に枕飾りや末期の水として使うことも

樒は葬儀の場だけでなく、亡くなった後にも使われる植物です。故人の枕元に飾る祭壇の「枕飾り」や、息を引き取った故人の口に水を含ませる儀式である「死に水」「末期の水(まつごのみず)」では、今も樒が多く用いられます。

板樒や紙樒は樒を代用したもの

門樒を飾るのは、どうしても一定のスペースが必要となります。そのため葬儀の小規模化が進む最近では、門樒を省略するケースも見られるようになりました。紙を代用する場合は紙樒、板を用いる場合は板樒と呼び、これに墨で名前を書いて用います。葬儀会場の受付で一定の金額を支払うことで、紙樒や板樒を葬儀会場の入り口に掲示してもらうのです。

ただし地域によっては、紙樒や板樒の風習がない場所もあり、反対にスペースの都合で門樒を受け付けていない場合もあります。自分が贈る側になる場合は、事前に会場に確認を取りましょう。

樒とは仏教と深いつながりを持つ植物

仏教の葬儀でよく目にする「樒」。その歴史は古く、鑑真が仏教の教えと共に持ち込んだとも言われています。ただし、宗派はもちろん、地域や葬儀会場によってもこまかな取扱い方は異なるものです。不安な場合は事前にしっかり確認をしておきましょう。

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