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納棺師はどんな時に依頼するのか?納棺師になるための方法についても解説

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目次

納棺師とは遺体の身支度を整える人

納棺師とは、遺体の状態を整えて納棺までをサポートする人で、通称「おくりびと」とも呼ばれる仕事です。

似たような仕事として湯灌師(ゆかんし)がありますが、こちらは遺体を入浴させる湯灌を中心に行う人のことです。

しかし、実際は納棺師が湯灌から納棺までを行ったり、逆に湯灌師が納棺師の仕事も兼任することが多く、その区別は曖昧です。

この記事では、納棺師の具体的な仕事内容や納棺師を依頼した際の料金に加えて、納棺師を目指す人向けに納棺師になるための情報も紹介します。

納棺師の仕事

これまでの葬儀といえば、葬儀社のスタッフが葬儀全体の進行役を務め、納棺についても葬儀社のスタッフに任せるのが一般的でした。

そのため、簡単な死化粧と既成の死装束を着せる程度で、特別な処置をするのは遺体の損傷がひどい時などに限った稀なケースでした。

しかし近年では、故人を生前のような姿で旅立たせてやりたいという遺族も増え、映画「おくりびと」の影響もあって、納棺のプロである納棺師を希望する人も増えています。

納棺師は技術が高く、作業も丁寧なので、故人が見違えるような姿になって驚く遺族もいるほどです。

もちろん遺体の損傷が大きい場合は、葬儀社スタッフや遺族だけで遺体を整えるのは限界があり、そのような場合も納棺師は非常に重要な役割を担います。

具体的な納棺師の仕事について見ていきましょう。

湯灌(ゆかん)

湯灌とは、故人を入浴させて清める儀式です。

実際に遺体を入浴させるかどうかは遺族の判断に任せられるので、アルコールを含ませた脱脂綿で遺体を拭くだけの清拭(せいしき)で済ませる場合もあります。

入院先で亡くなった場合は、看護師がエンゼルケアとして清拭や排泄物の処理などしてくれるので、湯灌の儀式は形式上行われることもあります。

湯灌の流れは以下の通りです。

  1. 逆さ水(さかさみず)

水を張った浴槽に、お湯を注いでぬるま湯を作ります。

湯舟にぬるま湯をためる通常の手順とは逆の手順で行うことから、逆さ水と呼ばれます。

現世の習慣と逆の手順を行う「逆さごと」の習慣のひとつです。

  1. 遺体を移動

大判のバスタオルなどで遺体を包み、バスタブへ移動させます。

  1. 口上(こうじょう)

納棺師が湯灌の儀式の説明を行います。

  1. お清め

納棺師が専用のボディソープを使って遺体を洗います。

遺族が参加する場合は交代で、左手に柄杓(ひしゃく)を持ち、遺体の足元から胸元へお湯をかけいきます。

  1. 洗髪と洗顔

納棺師が洗髪と洗顔を行います。

故人が男性の場合は、この際に髭剃りも行います。

最後に全身をシャワーで流します。

身支度を整える

湯灌が済んだら、遺体の水気をふき取り布団へ移動させ、装束の着付けを行います。

装束は葬儀社が用意する白装束の他、故人にゆかりのある衣装を用いることも可能です。

着付け後に髪の毛のセットとメイクを施します。

頬をふっくら見せるために口に綿を詰めたり、傷口を目立たないように処置を施したり、こまやかな部分に気を配りながら生前に近い状態に整えていきます。

肌は下地とファンデーションで温かみのある色に整え、防腐効果のあるクリームをつけます。

さらに、遺体の腐敗を防ぐための処理も行います。

衣装にドライアイスを仕込んだり、場合によってはドライアイスや防腐剤を体内に入れたりすることもあり、これらの作業は納棺師だからこそできる処置と言えるでしょう。

遺体を棺に納める

いよいよ遺体を棺に納めます。

きれいに整えた身支度を崩さず遺体を傷つけないように、2人以上で細心の注意を払いながら納棺します。

納棺師が中心となり棺に納めますが、遺族も供養のためにできるだけ手を添えるのが良いとされています。

棺に納めたら、故人の手を胸の上で組み数珠をかけ、死装束の杖や編み笠、草履などがある場合は、それらも納め、上に布団をかけます。

最後に、故人にゆかりのある副葬品を納めて納棺の儀式は完了です。

納棺師の依頼方法

納棺師を依頼する場合は、基本的には葬儀社を通して行います。

葬儀社に納棺師がいる場合もありますし、いない場合でも提携先に納棺師の派遣を依頼してもらえます。

また納棺師が運営する葬儀会社もあるので、家族葬のように納棺の儀が葬儀のメインになる葬儀なら、こうした葬儀社に依頼するのも良いでしょう。

納棺師の料金

納棺師を依頼する費用は5万~10万円程が相場です。

湯灌はせずに清拭と装束の着付け、メイクのみを施した場合は5万円前後、専用の浴槽を持ち込んで入浴をさせる場合は10万円前後が相場です。

納棺師を依頼した方が良い場合とは

納棺師は遺族が希望すれば誰でも依頼することができます。故人を美しい姿で旅立たせてやりたいと思うなら、納棺師を依頼することも供養になるでしょう。

また次のような場合は、特に納棺師を依頼することをおすすめします。

湯灌をさせてやりたい場合

生前に入浴が好きだった故人に最後の入浴をさせてあげたい、または長期間の闘病で入浴ができなかったので体をキレイにしてあげたいなど、故人への供養のために湯灌を行う場合です。

湯灌には専用の浴槽を使い、湯灌につかった水も通常の排水には流さず、納棺師が持ち帰り処理するのが原則です。

自宅の浴室で無理に入浴させようとすると遺体が傷つく恐れがあり、万が一遺体から排泄物などが流れ出た場合に排水も難しくなるので、納棺師を依頼すると良いでしょう。

遺族の心理面な配慮が必要な場合

事故や自死などの突然の死は、遺族にとって大きな悲しみです。

さらに遺体に損傷があれば、精神的なショックから、故人を直視できない可能性があります。

納棺師は、このような遺族の心理的なショックを和らげる役目も担います。

故人との最後の別れをできるだけ穏やかに過ごせるように、故人を生前に近い姿に戻してほしい時にも、納棺師を依頼することをおすすめします。

納棺師の資格を取る方法

納棺師になるために、特別な資格はありません。

逆に言えば、誰でも納棺師になれる可能性があると言えます。

納棺師を仕事にしている人の多くは、葬儀社に入り納棺の技術を身に着けていった人や納棺の専門業者に就職した人がほとんどです。

ただし、葬儀社の場合は必ずしも納棺師になれるとは限らないので、納棺師を専門に目指すなら納棺師の専門業者に就職する方が近道と言えるでしょう。

また、就職直後に納棺や湯灌の研修を受けて技能を身に着ける会社もあれば、葬儀全般に携わる中で長期間の間に徐々に経験を積んでいく会社もあります。

就職先を探す段階で、研修の内容や期間なども確認すると良いでしょう。

また、専門学校で納棺師の技術を学び、就職先を紹介してもらう方法もあります。

納棺師になるための学校 

納棺師の技術を専門的に学べる学校は、日本では唯一「おくりびとアカデミー」だけです。

設立は2013年と歴史は浅いものの、半年間のコースで即戦力となる納棺師を育てる実践的なカリキュラムが組まれています。

納棺師コースは週3日間の通学で1日3時間~5時間の授業なので、社会人で納棺師の技術を学びたい人でも、比較的通学しやすいのが特徴です。

またコロナ禍の影響で、オンライン授業も行われているのでより参加しやすくなっています。

こちらの代表はNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」でも紹介された人物で、彼のおくりびととしての姿勢に共感し、入学を希望する人もいるようです。

また、納棺師専門ではありませんが、葬祭ディレクターとして葬祭の全般を学べる専門学校もあります。

葬祭ディレクターの専門技術を学ぶ学科を設けているのは以下の4校です。

卒業までに葬祭ディレクター技能審査2級取得を目指せるうえに、就職のサポートも手厚いのが魅力です。

その他にも、ブライダルやウェディングの専門科で葬祭についても学べる専門学校もあり、2年制のところがほとんどです。

納棺師になるための資質

納棺師は多い時は、1日に5件以上の納棺を行います。

当然ながら、その都度人の死と向き合い、遺族の悲しみに接することになるので、遺族に寄り添い共感する心と同時に、自分を保つ精神的な強さも求められます。

また、遺体が傷ついている可能性があるので、そのような遺体を扱うことに抵抗がある人は、とてもストレスが大きくなります。

さらに共感力が高すぎて、遺族の悲しみに感情移入してしまうのも考えものです。

繰り返しになりますが、多い時は1日に5件以上もの葬儀に関わる納棺師が、その都度、落ち込んでしまっていては仕事になりませんし、自身の心も壊れてしまいます。

その意味で、納棺師はプロとして淡々と仕事ができる高い技術と強いメンタルが必要なのです。

また、24時間体制で依頼を受け、遺体を実際に持ち上げる体力も必要です。

これらの踏まえると、納棺師になるためには次のような資質が求められると言えるでしょう。

納棺師になるための資質

・遺体を扱うことに恐怖心や抵抗感がない

・臭いを許容できる

・健康で体力がある

・他人の気持ちに寄り添って誠実に対応できる

・礼儀正しい接客ができる

・人の役に立つことにやりがいを感じる

・その場に応じた臨機応変な対応ができる

・家族が納棺師の仕事に偏見を持っていない

・自動車運転免許を有している

納棺師の給与

納棺師の給与は、地域や所属する会社にもよりますが、社員の場合は月給20~30万円前後、年収にすると300~400万円が相場と言われています。

一応シフトは組まれていますが、急な呼び出しも多く、業務が特殊なので手当が支給される場合もあります。

今後の高齢化社会では、納棺師の重要性はさらに高まっていくことが予想されます。

また、年齢や学歴は問われない職場が多いので、納棺師を目指したい人にとっては窓口は開かれていると言って良いでしょう。

まとめ

納棺師は故人の最後の姿を整えることで、遺族の心も癒す重要な仕事です。

人間は誰もが死ぬので、その意味では誰でも納棺師のお世話になる可能性があります。

死生観が多様化しているこれからの時代には、納棺師が担う役割もさらに重要になっていくことでしょう。

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