弔事とはお悔やみごとのこと
弔事とは、人が亡くなったことから葬式までのお悔やみごとです。一方、弔辞は弔いの言葉、故人へ向けたお別れの挨拶を表します。
また弔事と似たような言葉として慶事がありますが、慶事は結婚などの喜ばしいことを意味します。慶事と弔事を合わせて「慶弔」といわれます。
ここでは「弔事」の言葉の意味とマナーについて、慶事と比較しながら解説します。
慶弔とは
慶弔は慶事と弔事を合わせた言葉で、慶事は出産や結婚といったお祝い事、弔事は葬儀などの不幸を指します。慶弔は「冠婚葬祭」と同じような意味として使われますが、慶事と弔事では喜びと悲しみで逆の意味となるので、それぞれの意味を正しく理解しておきたいですね。
慶事と弔事が重なった時、どちらを優先させるか?
会社の上司の葬式と親しい友人の結婚式が重なったとき、どちらを優先させるか迷います。この場合、一般的には弔事を優先させます。あまり話したことがない上司より、仲のいい友人でしかも結婚式なら、そちらを優先させたくなるかもしれません。どちらも大切な式ですが、後から個人的にお祝いできる結婚式に対し、最後の別れである葬儀の方が重いものと考えられます。上司との最期のお別れを優先させましょう。
このように弔事と慶事が重なったときは、基本的には弔事を優先させます。ですが、身内の結婚式の場合は慶事を優先させてもかまわないとされています。
弔辞とどう違う?
弔事と弔辞は読み方はどちらも「ちょうじ」で同じですが、意味は違います。
弔辞は葬式で故人へ向けた別れの挨拶のことです。遺族から弔辞を頼まれたときは快く引き受けましょう。訃報を知ったときの信じられない気持ちや故人と出会ったときのこと、楽しかった思い出、故人の人柄を偲ぶエピソードをあげて、最後に故人の冥福を祈って別れの挨拶とします。
慶事で「喜」の字を使わないのはなぜ?
慶事は結婚や出産のように喜ばしいことです。喜ばしいことなら「喜」の字を思い浮かべる人が多いですが、「慶」は格式が高く公的に喜ばしいことを表します。「慶」の字の由来の一つとしてお祝いに鹿の皮を贈り物としたことが喜ばれたので、鹿の字に心をつけたとされています。
弔事と慶事のマナー比較
弔事と慶事は、改まったマナーが求められますが、より多くのマナーが求められるのは弔事です。弔事と慶事でのマナーを正しく知って、悲しみやお祝いの気持ちを伝えたいですね。
お祝い・香典の包み方と袱紗(ふくさ)
【慶事の場合】
包みに入れるお札は新札を使います。新しい門出を祝して、準備していた気持ちを表すためです。どうしても新札を準備できなかったときは、せめてアイロンをかけましょう。
【弔事の場合】
準備して待っていたわけではないので、新札ではないお札を使います。と言ってもあまりヨレヨレとしたくたびれ感のあるお札は避けてください。新札しかないときは、少し折り目をつければ弔事として使えますよ。
袱紗は紫のものを1つ持っておくと、慶弔両用できて便利です。ただし紫でも柄があると慶事用になり、弔事では使えません。
男性の礼服
男性の場合、慶弔どちらでもブラックスーツを着ます。ただし弔事用の場合、色はどのような黒でもいいわけではなく、漆黒のものを選びます。浅い黒のようなスーツは避けましょう。
ネクタイの色は慶事は白のネクタイ、弔事では黒のネクタイです。
夏にジャケットを着るのはかなり暑いですから、冬用と夏用のブラックスーツをそれぞれ用意しておきたいですね。
女性の礼服
女性の場合は、弔事と慶事では礼服は変わります。弔事は慎ましく、慶事は華やかな装いが基本です。
慶弔両用のブラックフォーマルがありますが、厳粛でマナーを求められることが多い弔事の場では、生地やデザインには気をつけましょう。サテンのように光沢のある黒の生地やフリルやレースがついたデザインのものはふさわしくありません。肌の露出はが少なく、スカート丈は膝下とされています。
実際に葬儀に参列する場合、遺族は喪服を着ますが、仕事や友人関係の葬儀に参列する際はデザインが控え目なブラックフォーマルを着ることもあります。
とは言っても弔事用と慶事用で、それぞれにふさわしい服装を準備しておいたほうが無難です。
バックについて
バッグはシンプルで光沢のないものを1つ持っていると、慶弔どちらにも使えて便利です。
ただ慶事用で使うとなると地味になりすぎるので、リボンなどの飾りをつけて喜びの気持ちを表しましょう。弔事用バッグとして禁物なのは、蛇皮など生き物を殺傷して作られたことがわかるバッグです。
靴について
靴は弔事用は光沢がなくて、飾りがついていないシンプルなデザインのものを選んでください。
アクセサリーについて
弔事でのネックレスは真珠で一連のもの。不幸が重ならないようとの願いからです。指輪は結婚指輪はつけてもかまわないですが、赤や青などの色の宝石の指輪はつけないのがマナーです。真珠の指輪はつけてもかまいません。
化粧について
葬儀への参列では化粧は控えめにしましょう。ノーメイクが失礼にあたるように、厚化粧も失礼にあたります。葬儀だからいつもよりきちんと感を出した化粧にしようと、口紅を色鮮やかに塗ってしまうのは間違いです。色鮮やかな口紅は祝い事を表します。
手紙の書き方
弔事と慶事で手紙を書くときのそれぞれの注意点と共通点をあげてみます。
弔事で手紙を書くときの注意点
弔事での手紙は白無地の便箋に薄墨で書きます。悲しくて涙によって墨が薄くなったことを意味しますが、仏式の49日法要など忌が明けると、はっきりとした黒墨で書くとされています。でもこれは地域によって異なり、忌が明けても薄墨で書くところもあります。不快な思いをさせないように、確認した上で書きましょう。
封筒は一重のものを使い、便箋は1枚に収まるようにします。2~3枚になると不幸が重なることを連想させてしまうからです。
慶事で手紙を書くとき注意点
慶事での手紙は、白無地の便箋に心からの率直なお祝いの言葉を書きましょう。封筒は裏紙のある二重のものを使い、招待状を出すときは洋封筒に入れます。
慶弔共通の書き方のマナー
弔事でも慶事でも、忌み言葉は使わない、あるいは他の表現に置き換えて書きましょう。
またどちらも句読点を使わないことが伝統としてあります。句読点は「終わる」「途切れる」ことを連想させてしまうからという意味もありますが、受け取った側から「句読点がないと読みにくい」という声もあげられています。
読点の代わりに1字分の空白をあける、句点の代わりに改行するなどの工夫をするのが一般的ですが、自身で手紙を書いたり、PCで作成したりする場合は、句読点を使う人も増えています。
まとめ
弔事は人が亡くなったことから葬儀までのお悔やみごと、慶事は結婚式などのお祝いごとでどちらも改まった場としてマナーが求められます。服装や言葉遣いには十分に配慮しましょう。
いずれのマナーも、弔事では不幸が繰り返されないことを願い、慶事は幾久しい幸せを願うことがマナーの始まりで、日本人の細やかな心配りから始まっています。細かくて面倒に思うことが多いかもしれませんが、一つひとつのマナーを大切にすることで、日本人の繊細な気配りの心を受け継いでいきたいですね。