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壁墓地とは?都市型低コスト墓で永代供養可能、種類や特徴、相場の実情を詳しく紹介
壁墓地とは土地を有効活用した新しいお墓
壁墓地は「かべぼち」と読み、土地を有効活用した新しいお墓の形です。
墓地不足の首都圏など都市部で導入されています。新しいタイプのお墓ですが、一般墓と同様に永代供養ができるお墓として注目されています。
一般墓と壁墓地の面積を比較すると壁墓地はコンパクトで省スペースなため、霊園は土地を有効的に活用できるメリットがあり、墓地不足が深刻な東京都では平成3年から多磨霊園、小平霊園、八柱霊園で導入されました。
また壁墓地は使用する面積がコンパクトで、かつ墓石の使用量が少ないため、一般墓と比べるとコストが低く、消費者は安価で購入できるメリットがあります。
土地を有効活用したことで低コストにつながり、また永代供養ができるため、消費者のニーズにマッチしたお墓といえます。このように霊園、消費者双方にメリットのある「壁墓地」は、今後も増えると予想されます。
日本ではなじみの薄い「壁墓地」ですが、ヨーロッパでは一般的なお墓です。その歴史は古く、紀元前に作られたイタリアの「シラクーサとパンタリカ岸壁墓地遺跡」は世界遺産に登録されています。
低コストの壁墓地には3つのタイプがある
先述したように、壁墓地が注目されるのは首都圏などの都市部です。墓地不足といった背景から、土地の有効活用ができる壁墓地の導入が進んでいます。
壁墓地には大きく分けて3つのタイプがあります。
① 自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置するタイプ
② ひな壇状に造成した擁壁を利用したタイプ
③ 納骨堂タイプ
以下の見出しでそれぞれ詳しく解説します。
① 自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置するタイプ
最初に紹介するのは、自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置するタイプです。都立多摩霊園を例に解説します。
都立霊園では壁墓地を「壁型埋蔵施設」といい、平成3年から導入しています。
「都立霊園 埋蔵施設・みたま堂 使用の手引」では、壁墓地は以下のように説明されています。
壁型埋蔵施設(壁型墓所)
引用元:都立霊園 埋蔵施設・みたま堂 使用の手引
自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置した埋蔵施設です。
墓石、カロート(地下納骨施設)は既に設置されており、直径 21cm(7 寸)の骨壷6個を収納できる広さがあります。
都立霊園の壁墓地の特徴は、
・ 自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置した埋蔵施設
・ 墓石とカロート(地下納骨施設)が設置済
・ カロートは直径 21cm(7 寸)の骨壷6個を収納できる広さがある
また注意点や規定は以下の通りです。
・カロートの改造、生垣・土盛り・仕切り・囲障の設置、植樹などは一切できない
・卒塔婆を置くことはできない
・墓石には名板により家名を表示することができる
※名板を設置する場合は、 原則として使用者の家名を表示する
※名板:縦 20cm 以内 横 35cm 以内 厚さ 3cm 以内の腐朽、腐食および破損しにくい材質のもの
・線香立て、花立てなどを設置することができる
※線香立て、花立て:高さが壁面の高さの 3 分の1 以内で幅、奥行きが台石の幅および奥行きの範囲内のもの
参照:都立霊園 埋蔵施設・みたま堂 使用の手引
これら注意点や規格は、東京都霊園条例施行規則の「第21条 壁型埋蔵施設の設備制限」に定められています。
② ひな壇状に造成した擁壁を利用したタイプ
次に紹介するのは、ひな壇状に造成した擁壁を利用したタイプです。こちらは横浜市営日野公園墓地を例に解説します。
横浜市では壁墓地を「壁面式納骨施設」といい、「横浜市墓地および納骨堂に関する条例」の第2条に記されています。
平成5年から「壁墓地」を導入しています。
「令和4年度 横浜市営墓地・納骨堂申込みのしおり」では、壁墓地は以下のように説明されています。
・ひな壇状に造成した擁壁を利用して、墓石と納骨施設をセットで利用できる
・1基にはおおむね6体(7寸壺)の遺骨を納骨することができる
山の斜面を利用しているため、日当たりが確保され、明るく解放感があります。
③ 納骨堂タイプ
最後に紹介するのは、納骨堂タイプの壁墓地です。主に民営霊園や寺院霊園に導入されています。今回は民営霊園を例に解説します。
納骨堂タイプの壁墓地は「壁墓地タイプ」と呼ばれ、画像のようにロッカー式になっています。
特徴は以下の通りです。
◎ご遺骨は骨壺で13年、または17年間個別にご安置した後、合祀します。
引用:フォーシーズンメモリアル新座 永代供養墓「四季」
◎1つの区画に4名様まで一緒に入ることが可能です。
◎銘版表示によって個人の埋葬場所を確認できるので、一般のお墓と同様にお参りできます。
◎埋葬後は、管理料や維持費などは一切不要です。
①、②、③と3つのタイプを解説しました。いずれの壁墓地も墓石を購入する手間や出費がなく、消費者の負担が少ないお墓です。
壁墓地の類語
壁墓地の類語は以下の通りです。
・ 壁面墓地
・ ウォール墓地
・ ウォールモニュメント墓地
低コストは本当?壁墓地の相場や管理費の実情
壁墓地は低コストというのは本当なのか、実際の金額について調べました。また価格の比較ができるように、一般墓、樹木葬、納骨堂の全国平均購入価格、年間管理費もあわせて記載しています。
壁墓地の相場
壁墓地の購入金額または使用料は以下の通りです。※価格は変動する可能性があるため、購入の際は各霊園に確認してください。
お墓の種類 | 購入価格または使用料 | 備考 |
① 自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置するタイプ (多摩霊園の場合) | 1,580,000 円 | 1.5 ㎡相当/箇所 永代使用料込み 墓地、墓石、カロートを含む 価格参照:東京都内の墓所事情 |
② ひな壇状に造成した擁壁を利用したタイプ (横浜市営墓地の場合) | 220,000円 | 1基につき 10年間 墓地、墓石、カロートを含む 価格参照:横浜市墓地および納骨堂に関する条例 |
③ 納骨堂タイプ (フォーシーズンメモリアル新座 永代供養墓「四季」の場合) | 550,000円~750,000円 | 2名~4名で金額が異なる 永代使用料・埋葬後管理料・銘板・刻代年2回供養料含む 価格参照:フォーシーズンメモリアル新座永代供養墓「四季」 |
一般墓の全国平均価格 | 1,587,000円 | 墓石代、土地利用代、諸経費を含む 価格参照:【第13回】お墓の消費者 全国実態調査(2022年)ー いいお墓 |
樹木葬の全国平均価格 | 696,000円 | 価格参照:上記と同じ |
納骨堂の全国平均価格 | 794,000円 | 価格参照:上記と同じ |
① 都立多摩霊園では一般墓地の使用料は約250万円となり、さらに墓石代は別途必要です。しかし墓石代が不要な壁型墓地は158 万円で使用できるため、一般墓地と比べると低コストといえます。
② 横浜市営墓地の場合は利用期間が10年間とありますが、横浜市墓地および納骨堂に関する条例に「当該使用者に代わって祭しを主宰する者が、市長の許可を得て承継することができる。」とあり、10年以降も継承可能です。
③納骨堂タイプは納める遺骨の数で購入金額が異なります。また上段は下段よりも料金が高く設定されているようです。
①、②、③の金額を見ると、それぞれの地域や利用期間などで金額にバラつきが見られました。最も安価なのは、横浜市営墓地の「ひな壇状に造成した擁壁を利用したタイプ」。利用期間が10年と決まっていますが、その後も後継者が継承できる制度となっているため、結果永代供養ができる非常に低コストのお墓といえます。
壁墓地の年間管理費
壁墓地の年間管理費は以下の通りです。
お墓の種類 | 年間管理費 | 備考 |
① 自然石で造られた墓石を壁面状に連続して配置するタイプ(多摩霊園の場合) | 1,220円~3,660円 | 年間管理費参照:東京都報道発表資料_使用料及び管理料 |
② ひな壇状に造成した擁壁を利用したタイプ (横浜市営墓地の場合) | 5,000円 | 年間管理費参照:横浜市墓地・納骨堂の年間管理料のお支払いについて |
③ 納骨堂タイプ (フォーシーズンメモリアル新座 永代供養墓「四季」の場合) | 0円 | 生前の方のみ年間管理料1,296円 年間管理費参照:フォーシーズンメモリアル新座永代供養墓「四季」 |
一般墓の全国平均 | 7,907円 | 年間管理費参照:【第13回】お墓の消費者全国実態調査(2022年)ー いいお墓 |
樹木葬の全国平均 | 6,027円 | 年間管理費参照:上記と同じ |
納骨堂の全国平均 | 11,893円 | 年間管理費参照:上記と同じ |
①、②は一般墓や樹木葬、納骨堂の年間管理よりも安価ということがわかりました。毎年の出費を抑えたい方にも「壁墓地」はお墓の選びの候補に上がるのではないでしょうか。
公営霊園の年間管理費は各都道府県で異なるため、利用の際は必ず確認してください。また民営霊園の場合は契約前に確認しましょう。
壁墓地のメリット・デメリット
壁墓地のメリット・デメリットを紹介します。
壁墓地のメリット
壁墓地もメリットは以下の通りです。
壁墓地のデメリット
壁墓地のデメリットは以下の通りです。
壁墓地にはメリットも多いですが、デメリットも少なからずあります。それらを考慮し、購入を検討しましょう。
壁墓地に関するQ&A
- 壁墓地は個人用のお墓ですか?
-
いいえ、家族や夫婦で使用できるお墓です。
壁墓地の構造により納められる遺骨の数が異なるため、購入する際は現地や手引き書で確認しましょう。 - 壁墓地は永代供養墓ですか?
-
はい、永代供養墓です。継承などの詳細については各霊園にてご確認ください。
壁墓地のまとめ
壁墓地は、永代供養ができる低コストの新しいお墓の形です。首都圏などの都市部の墓地不足を背景に導入が進んでいます。
低コストに加え、年間管理費も一般墓などに比べ安価な点も魅力。また清掃などの維持管理にも手間がかからず、安価で維持管理が簡単な「壁墓地」は消費者のニーズにマッチしています。
また霊園側も限られた土地を有効活用できるメリットがあり、公営霊園、民営霊園に限らず「壁墓地」の導入は今後も増えていくことでしょう。