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千手観音とは?ご利益・真言は?千手観音像の特徴・国宝を祀っている寺院を紹介
千手観音とは救済の慈悲を多くの手で表現している仏様
千手観音とは正式名を千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんげんかんじざいぼさつ)と言い、「生きとし生けるもの全てを漏らすことなく救済したい」という慈悲を持つ仏様です。
その名の通り、千の手と千の眼で人々の苦しみをみつけ、救い出すという大きな慈悲から「大悲観音(だいひかんのん)」と呼ばれることや、得られる功徳が大きい事から「蓮華王(れんげおう)」「観音王(かんのんおう)」と呼ばれることもあります。
観音菩薩が変化した六観音に属する
千手観音は「観音菩薩(かんのんぼさつ)」が変化した姿でもあります。
観音菩薩は「人々の苦しみの声を聞き、その人に合った救いの手を差し伸べる」菩薩であり、あらゆる人々の苦しみや願いを聞くため、三十三の姿に変化するとも言われています。その中でも代表的な姿が六観音と呼ばれる姿であり、千手観音はこの六観音の一体に属します。
六観音は他に
●聖観音(しょうかんのん)
●馬頭観音(ばとうかんのん)
●十一面観音(じゅういちめんかんのん)
●如意輪観音(にょいりんかんのん)
●准胝観音(じゅんでいかんのん・じゅんていかんのん)
があります。
なお、観音菩薩と称して祀られてる姿は、多面多臂(ためんたひ:多くの顔や多くの腕を持っている姿)などの人間とかけ離れた姿ではなく、一面二臂(いちめんにひ:ひとつの顔と二本の腕)という人間に近い姿で表現される聖観音です。
六道における餓鬼道の救済を担う
仏教では、現世の行いで与えられる苦楽の報いが異なり、行きめぐる世界が分かれると考えられています。その世界は六つに分けられ「六道(ろくどう・りくどう)」と呼ばれます。
この六つの世界は、楽しみの多い世界から天道(てんどう)・人間道(にんげんどう)・修羅道(しゅらどう)・畜生道(ちくしょうどう)・餓鬼道(がきどう)・地獄道(じごくどう)です。
餓鬼道に生まれ変わる人は、生前に自己中心的な生活を送っていたり、欲望のままに生きていた人々。ノドの渇きも潤せず、食べることが叶わないため渇きと餓えに苦しみ続けます。
千手観音はそんな餓鬼道に迷う人々を救うと考えられています。
千手観音の真言
真言とは、サンスクリット語の「マントラ」を略したもので「偽りのない仏の真実」と解釈できる言葉です。短い文言の中に仏の教えを十分に込められているといえます。
千手観音の真言は、オン・バザラ・タラマ・キリクです。
千手観音のご利益
千手観音は、人々を救うための手が多い分、得られるご利益も多いと考えられています。そのため、災難除け、病気平癒などあらゆる現世利益を網羅しているのです。
さらに、夫婦円満や恋愛成就、安産や子宝成就にも功徳があるとされており、後生善処(ごしょうぜんしょ:亡くなったあと来世でも幸せに過ごせる)などのご利益もあります。
千手観音像の特徴
千手観音像は「千本の腕を持っている」ことが最大の特徴です。さらに手のひらには眼をもっており、多くの人々を見守っています。
他にも、腕が多い分その手は豊富な持物を持っていることも大きな特徴だといえるでしょう。
千の手と千の眼を持つ
千手観音はその名の通り、千の手を持った仏様です。この千の手には、千の眼がついており、千の眼で人々を見守り、千の手で救済することを象徴しています。
しかし、実際の仏像は腕の数が42本であることが一般的。42本の内訳は、本手が2本、脇手が40本の合計42本。この本数には「脇手の1本が25の俗世間で生きものを救済する」と考えられていることが理由にあります。
40×25=1000になるため、40本の脇手を表現した千手観音像の作例が多い理由だといえるでしょう。
中には1000本の腕をもつ姿もある
42本の腕を表現している仏像が多い中、中には1000本以上の腕を有していたり、本来は1000本あったと考えられる仏像の姿もあります。
十一面千手千眼観音菩薩像
大阪府の葛井寺(ふじいでら)に祀られている国宝・十一面千手千眼観音菩薩像(じゅういちめん せんしゅせんがん かんのんぼさつぞう)は、正面にある合掌手の40本に小手の1001本を合わせ、1041本もの腕が表眼されています。この姿は大変貴重であり、国内で唯一1000本以上の手が表現された像例として有名です。
葛井寺公式HP:https://www.fujiidera-temple.or.jp/
千手観音隆像(せんしゅかんのんりゅうぞう)
奈良県の唐招提寺(とうしょうだいじ)に祀られている国宝・千手観音隆像には、大脇手が42本、小脇手に911本もの腕が表現されており、その数は合計953本にも及びます。脇手がバランス良く配置されていることなどからもともとは1000本の腕があったと考えられています。
唐招提寺 公式HP:https://toshodaiji.jp/
持物(じもつ)が多い
千手観音は、表現されている手が多い分それぞれの手にはご利益のある持物(じもつ:仏具のこと)を持っていることも特徴のひとつです。
持物の一覧
千手観音が持っている持物の名称と意味は以下の通りです。
名称 | 読み方 | 意味 |
宝珠 | ほうじゅ | 宝にめぐりあえる |
羂索 | けんじゃく | 不安をとりのぞき、平安をあたえる |
宝鉢 | ほうはつ | 病気(腹)を癒す |
宝剣 | ほうけん | 鬼神をしりぞける |
三鈷杵 | さんこしょ | 大魔神をしりぞける |
金剛杵 | こんごうしょう | すべての怨敵を打ち破る |
施無畏印 | せむいいん | おそれを取り除き、安心を与える手の形(手のひらを前に向けた状態) |
日精摩尼 | にっしょうまに | 闇を照らす |
月精摩尼 | げっしょうまに | 病気(熱や毒)を癒す |
宝弓 | ほうきゅう | 出世させてくれる |
宝箭 | ほうせん | 多くの友人に恵まれる |
楊柳 | ようりゅう | あらゆる病気にかからない |
白払 | びゃくはつ・びゃくほつ | 悪い傷害を退ける |
胡瓶 | こへい | 水を注ぎ、平和を得る |
傍牌 | ぼうはい | 楯(たて)であり、獣の難をさける |
鉞斧 | えつふ | 難をのぞき平和をもたらす |
玉環 | ぎょくかん | 良い従者に恵まれる |
白蓮花 | びゃくれんげ | 功徳を得る |
青蓮花 | しょうれんげ | 十方浄土に往生する |
宝鏡 | ほうきょう | 智慧を授かる |
紫蓮花 | しれんげ | 如来に会える |
宝篋 | ほうきょう | 地中に隠れたものを得て、冥福を得る |
五色雲 | ごしきうん | 仙人になれる |
唐瓶 | からびん | 梵天にうまれる |
紅蓮華 | ぐれんげ | 諸天に生まれる |
戦鞘 | せんしょう | 逆賊を退ける |
ほら貝 | ほらがい | 善神をまねく |
ドクロ | どくろ | 鬼神を降伏させる |
数珠 | じゅじゅ | 仏の手をこうむる |
宝鐸 | ほうたく | 音声を得る |
宝印 | ほういん | すばらしい弁舌を得る |
倶尸鉄鈎 | くしてつこう | 龍神に守ってもらえる |
錫杖 | しゃくじょう | 慈悲をもって人々を加護する |
合掌 | がっしょう | 周囲からの尊敬を得られる |
化仏 | けぶつ | つねに諸仏のそばにいられる |
宮殿 | きゅうでん | 諸仏の宮殿に生まれ変われる |
宝経 | ほうきょう | 良いことを多く聞ける |
金輪 | こんりん | 菩薩の心を得られる |
頂上化仏 | ちょうじょうけぶつ | 来世は必ず仏になるという約束を得られる |
葡萄 | ぶどう | 五穀豊穣 |
※出典により多少の違いがあるため、この内容だけに限定されません。
国宝である千手観音を祀っている寺院
千手観音を本尊として祀っている寺院もあり、中には国宝に認定されている仏像もあります。
代表的な寺院は
●奈良県の唐招提寺
●大阪府の葛井寺
●京都府の三十三間堂 などです。
中でも、三十三間堂には千手観音像だけでなく、千体千手観音立像という非常に多くの観音像が祀られていることでも有名です。
京都府の三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)
京都府にある三十三間堂の正式名称は「蓮華王院(れんげおういん)」。三十三間堂は本堂の通称であり、堂内の柱が33本もあるという特徴があります。三十三という数字も、観音菩薩が三十三の姿に変化することに基づいています。
現存するお堂は、1266年に再建されたもの。お堂自体も国宝に認定されています。
三十三間堂 公式HP:http://sanjusangendo.jp/
千手観音像
仏像の高さが3メートルという大きさである「千手観音像」は、鎌倉期の再建時に完成した大作です。作者は大仏師と呼ばれた「湛慶(たんけい)」。身内にあたる弟子をひきいて完成させた物だとされています。
厚ぼったく温和な印象を感じる観音像の表情は、湛慶の特徴的な作風です。さらに湛慶が84歳でなくなる2年前に完成させた作品であり、鎌倉後期を飾る代表作品だといえます。
千体千手観音像
前後10列の階段状の壇上に並んだ、等身大の1000体の観音立像です。各像は頭上に11の頭を付けており、両わきに40の手をもつ容姿が表現されており、この数と迫力は三十三間堂でしか感じられません。
1000体のうち、124体は平安時代の作品であり、その他は鎌倉期に16年かけて再興されたもの。
500体には作者名が残されていることも大きな特徴で、運慶(うんけい)・快慶(かいけい)で知られる慶派や、院派、円派など当時を代表する仏師たちが国家的規模で参加したことが伺えます。
この1000体の中には、必ず合いたい人に似た観音像があると伝えられています。
千手観音とは救済の願いを多くの腕に込め、あらゆる人々を見守る観音菩薩が変化した姿
千手観音とは、生きとし生けるもの全てを救済したいという大いなる慈悲をもった菩薩です。その特徴は、千の腕と千の眼で表され、あらゆる人々を見守り、苦しみや悩みに手を差し伸べると言われています。そんな千手観音は、観音菩薩が変化した六観音の一体でもあります。
手の数が多い分、持物も多く、得られるご利益も豊富。あらゆる現世の利益を網羅していることも、人々が千手観音に手を合わせる理由だといえます。
そのため千手観音は、その姿をイメージしたダンスが創作されたり、マンガやイラストで登場したりと、年代を問わず多くの人々の心を掴んでいるのです。
国宝に認定されている千手観音像は国内に複数あるため、手を合わせ功徳を得られるよう真言を唱えてみましょう。