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御詠歌とは?地域や宗派による違いや代表的な一節を紹介
御詠歌とは寺院や霊場を巡礼する際に、僧侶ではない人々が唱える歌のこと
御詠歌とは「ごえいか」と読み、寺院や霊場を巡礼する際に、僧侶ではない一般の人々が唱える歌のことです。鈴(れい)や鉦(かね)を鳴らしながら詠われます。一節のみの単調な旋律であることが特徴的です。
西国三十三カ所や四国八十八カ所などを筆頭に、巡礼地とされる霊場には、本尊を讃えるなどの意味で御詠歌がある寺院も多くあります。
御詠歌の始まりは平安時代
御詠歌はインドを起源とし、中国を経て「仏の教えやその教えを説いた師を賛美する詩句」として日本に伝わったと考えられています。その後に日本の言葉で仏の教えを賛美した「和讃(わさん)」が生まれました。
当初の和讃は、僧侶などの限られた身分の人のみが詠うものでしたが、平安時代中期になると民衆にも仏の教えを伝えようと和讃が広まるようになります。そして、七五調の連句である和讃に旋律を乗せて詠うようになりました。
これらが継承され、現在の御詠歌に通じているとされています。
御詠歌は大きく分けて2種類ある
現在の御詠歌は
- 和讃
- 三十一文字の和歌に旋律を乗せたもの
に分けられます。
和讃の御詠歌
和讃は「仏の教えや、その教えを説いた師を賛美する詩句」です。和讃を御詠歌として詠う場合の所要時間は5分以上など、長めのものも少なくありません。
さらに仏教の宗派によって流派があることも特徴的です。有名な流派としては、金剛流や大和流、梅花流、花園流などがあります。
中には、詠歌和讃の信仰団体もあり、自らが唱えることで功徳を得られるといわれています。
和讃の御詠歌の一例
三十一文字の和歌の御詠歌
三十一文字の和歌の御詠歌の中で、もっとも代表的なものは「西国三十三カ所巡礼」に該当する寺院に伝えられているものです。
西国三十三カ所巡礼に指定されている寺院は、全て観世音菩薩が本尊です。これは観音菩薩が衆生の苦しみを聞き漏らすことなく救うために三十三の姿に変化したことに由来しています。
どの寺院に伝わる御詠歌も、観世音菩薩の功徳を讃えていると考えられています。
西国三十三カ所霊場に伝わる御詠歌の一例
■第一番 那智山 青岸渡寺(なちさん せいがんとじ)
「補陀洛や 岸打つ波は 三熊野の 那智のお山に ひびく滝津瀬」
ふだらくや きしうつなみは みくまのの なちのおやまに ひびくたきつせ
■第十六番 音羽山 清水寺(おとわやま きよみずでら)
「松風や 音羽の滝の 清水を むすぶ心は 涼しかるらん」
まつかぜや おとわのたきの きよみずを むすぶこころは すずしかるらん
■第二十八番 成相山 成相寺(なりあいさん なりあいじ)
「波の音 松のひびきも 成相の 風ふきわたす 天の橋立」
なみのおと まつのひびきも なりあいの かぜふきわたす あまのはしだて
CDやカセットでも販売されている
西国三十三カ所霊場の御詠歌は、CDやカセットテープなどで販売されています。巡礼に行く予定のある方は一度拝聴してみることで、より御詠歌に親しむことができるでしょう。
この他、御詠歌を真心込めて詠うことで、ご先祖さまの供養にもなると考えられているため念仏を目的として購入されるケースもあります。
《参考》楽天:西国三十三所御詠歌CD https://item.rakuten.co.jp/e-butudan/427811/
葬儀で御詠歌を詠う習慣のある地域も
西国三十三カ所などの霊場を巡礼するときに詠われる御詠歌ですが、近畿地方の一部や福井県などの地域では、葬儀や供養の時に詠われることもあります。
昔は四十九日を迎えるまで毎晩御詠歌を詠っていましたが、現在では忌日の前夜を意味する逮夜(たいや)ごとに詠う場合や、奇数の逮夜のみに詠うなど、詠う回数は減少しています。
地域の女性達が中心になり詠う場合も
福井県では「講」と呼ばれる集まりがあり、講に所属している女性が葬儀の際に御詠歌を詠う習慣が現在も残っています。
その他の地域でも「御詠歌隊」などと称し、地域の女性達が御詠歌を詠う習慣が根付いている地域もあります。その土地によって、習慣に違いがあることを把握しておくと良いでしょう。
御詠歌とは仏の教えに触れ、巡礼時だけでなく故人を弔うためにも詠われている歌
深い歴史がある御詠歌。現代では霊場の巡礼時や法会などを中心に詠われています。中でも三十一文字の御詠歌として西国三十三カ所霊場に伝わるものが有名で、どの御詠歌も観音菩薩の功徳を唱えていると考えられています。
また、近畿地方の一部や福井県では、葬儀や法要の際にも御詠歌を詠うという習慣が残っている地域があります。地域の女性達が中心となり御詠歌を詠い、故人の冥福を願います。
地域によりしきたりに違いがあることを心に留め、節回しや詩句に耳を澄ませてみましょう。