MENU

【筆者撮影写真あり】五重塔とは?日本全国にある謎・実は一階建ての真実・国宝の9つをご紹介

本ページはプロモーションが含まれています。

目次

五重塔は釈迦の遺骨を祀るために作られた仏塔の一つ

五重塔は、釈迦の遺骨を祀るために作られた仏塔の一つです。仏塔は、仏舎利(※ストゥーパ)と呼ばれる、釈迦の遺骨、遺体、またはその代替えを安置した仏教建築です。

この記事では、そんな五重塔が日本全国にあること、一階建てとして造られた建築構造、国宝に指定された9つについて紹介します。

※ストゥーパ:古代インドから中国に伝わった際「卒塔婆」と訳されました。そこから塔という言葉に行きつきました。

五重塔は仏教的宇宙観を示す五重の屋根をもつ

五重塔は、※仏教的宇宙観を示す五重の屋根をもっています。

五重塔の五重の屋根の構造です。一番下の層を初層と言います。下から順に以下の意味があります。

・地(基礎)

・水(塔身)

・火(笠)

・風(請花)

・虚空(宝珠)

※仏教的宇宙観:仏教におけるすべての世界は、須弥山を中心にした東西南北四代州です。その中に太陽系、銀河系、としての須弥山世界があり、全宇宙は大千世界。その中に私たちがよく言う「縁起」が存在していると思われます。

五重塔は日本全国にある

五重という名の付く塔は日本全国にあります。多数ある五重塔は、明治以降に建立されています。なぜ、こんなに多くの五重塔が存在するのでしょうか。

その謎について考えてみます。

五重塔には明治以降建立されたものが多数ある

五重塔は、明治以降に多数建立されていますが、こうしたものは、近世以前の由緒正しいものとは、異なります。観光用や個人で建立したものがほとんどです。

由緒正しい五重塔は近世以前のもので、国宝が9塔、重要文化財が13塔です。国宝の9塔は、後ほど紹介いたします。

五重塔は仏教のシンボルとして今も造られている

五重塔は、仏教のシンボルです。多数造られたのも、シンボルとしての役割が期待されているためと考えられます。

その役割は、天と地を結ぶことです。つまり、この世と亡き人たちの存在するあちらの世を結ぶと考えられます。

そんなところから、五重塔と呼ばれるストゥーパ(卒塔婆)は、こぞって日本各地に造られたのではないでしょうか。

五重塔は実は一階建!?

五重塔というと、その言葉通り、五階建ての建物のように思われがちです。しかし、そうでもないのです。

五重塔には柱がなく、五つの屋根と天井があり、それを心柱によって支えられています。

五重塔は大黒柱がない

五重塔には、大黒柱がありません。それにも関わらず、東京スカイツリーのお手本になったくらいの耐震構造ができていました。

地震の多い日本で、しかも木造建築です。科学的根拠はありませんが、五つの屋根や天井の構造によって、建物がうまく支えられているのではないかと考えられます。

たとえば、下層部から上層部に向かって細くなっている積み上げ構造がそれです。この微妙な比率により、耐震性を保っているという説が有力です。

五重塔は五つの屋根と高い天井をもつ一階建ての構造物

五重塔は、五階建てではなく、五つの屋根と高い天井をもつ一階建ての構造物です。

1階に見える部分には床があり、2層目より上は、屋根のついた木造の建築物です。階段を使って、各階に行くような現在の住まい構造とは異なります。

内部は階段がなく吹き抜け

上記に書きました通り、五重塔の内部には階段はなく、上層階までが吹き抜けです。

そして、その中心にあるのは、心柱といわれる一本の柱で、わずかに上部にタッチしている状態です。この心柱が柱の役割を果たしています。

五重塔の心柱に支えられている

五重塔は上部でご紹介した心柱に支えられています。この周りを囲むのが四本の柱である、四天柱、12本ある側柱です。

これらに支えられているので、地震に強いのです。たとえ地震で地面が揺れても、屋根が揺れるのみで、振動を抑えられます。

国宝に指定されている五重塔は9つ

ここからは、国宝に指定されている五重塔を9つ紹介いたします。

①羽黒山五重塔

https://www.tsuruokakanko.com/spot/256

出典:つるおか観光ナビより

羽黒山五重塔は、山形県出羽三山神社にある五重塔です。平安時代に平将門(たいらのまさかど)によって創建されました。高さ29mの東北地方最古の塔と言われています。

かつては多くの寺院がある場所でしたが、今は五重塔のみが杉木立の中に建っています。周囲にある樹齢1000年、周囲10mの巨杉「爺杉」も有名です。

現在の塔は600年前の建築で、三間五層柿葺素木造です。

東寺(教王護国寺)・五重塔

https://toji.or.jp/guide/gojunoto/

出典:東寺ホームページより

京都東寺にある五重塔は、塔の高さが55m。日本一高いことで知られています。

弘法大師空海によって建立された五重塔は、落雷などの災害のために4回ほど焼失しましたが、そのたびに建て替えられてきました。今の建物は、1644年に再建された5代目です。

内部には、空海が唐より持ち帰ったとされる仏舎利が納められています。

③醍醐寺・五重塔

https://www.daigoji.or.jp/garan/garan_frame/shimo_garan_frame_j.html

出典:醍醐寺ホームページより

醍醐寺の五重塔は、醍醐天皇の冥福を祈るために建てられました。完成したのは、951年の村上天皇の時代。京都府内で一番古い木造建築物です。

内部に描かれている両界曼荼羅や真言八祖は、日本密教絵画の源流と言われ、多くの方々に親しまれています。

こちらの建物のポイントは屋根の上に位置する13mの相輪です。 塔全体の高さは38mなので、相輪が3分の1を占めています。

④海住山寺・五重塔

http://www.kaijyusenji.jp/temple/

出典:海住山寺ホームページより

海住山寺(かいじゅうせんじ)の五重塔は高さが17.7m。室生寺の五重塔に次いで小さいサイズです。

鎌倉時代に造られた貴重な遺構です。建立を始めたのは貞慶でしたが、完成は没後の1214年でした。

塔の外観は細身ですが、下層部分にボリュームがあり、塔全体をしっかりと支えている様子が見受けられます。内部では、華やかな色彩で描かれた梵天・帝釈天の姿を拝むことができます。

⑤法隆寺・五重塔

http://www.horyuji.or.jp/

出典:法隆寺ホームページより

法隆寺の五重塔は日本最古。高さは31.5mです。

五層目の軸部の大きさが初層の2分の1になっており、良いバランスを保っています。そして、同時に美しい外観を醸し出しています。

最下層部には、塑像群(粘土で造られた像)が納められています。そのうちの80点が国宝です。

飛鳥時代に建立されたにも関わらず、優れた耐震構造になっており、スカイツリーにも応用されました。そのことから「耐震設計の教科書」とも言われています。

⑥興福寺・五重塔

筆者撮影

奈良県に位置する興福寺の五重塔は、730年、藤原不比等の娘光明皇后の願いにより、建立されたと言われています。

以来、5回の焼失や再建を経て現在に至ります。今の建物は1426年頃の再建です。

東寺に次ぐ日本で2番目に高い塔としても有名。現在の高さは50.1mですが、建った当時は45m程だったと言われています。その当時としては、日本で一番高い塔でした。

今でも、かつてのように、初層の須弥壇四方に、薬師三尊像、釈迦三尊像、弥勒(みろく)三尊像が安置されています。

⑦室生寺・五重塔

http://www.murouji.or.jp/precinct/list/column/

出典:室生寺ホームページより

室生寺の五重塔は、日本一小さく、高さは16mほど、初層の一辺も2.5mです。平安時代初期の800年に建立されました。

見栄えの良さから、カメラマンの被写体としても人気です。

一番下と最上層部の屋根の大きさは変わりませんが、塔全体としてみると、上へ向かってスリムになっていくような感じです。

⑧瑠璃光寺・五重塔

https://yamaguchi-city.jp/kozantop/topjp.html

出典:山口市観光情報サイト

瑠璃光寺の五重塔は、1399年、応仁の乱で亡くなった大内義弘を弔うために、弟である大内盛見によって、1442年に建立されました。

高さは31.2mです。五重塔の中では、平均的な高さ。

屋根は、日本古来の伝統的手法である檜皮葺(ひわたぶき)で作られています。上に向かってスリムになっていく、すっきりとした造りです。

初層は丈が高く太い柱を備えています。そして、2層目は縁勾欄があるしっかりとした造りです。室町時代の建造物にしてはめずらしく、装飾がほとんどない渋い感じに仕上がっています。

⑨明王院・五重塔

http://www.chisan.net/myooin/

出典:明王院公式ホームページより

明王院・五重塔は、1348年に一文勧進小資(いちもんかんじんしょうし)という少額の寄付で造られています。京都の醍醐寺と同じ和様建築で、高さは29.14mです。

和様建築は鎌倉時代から、行われてきた建築様式で、大陸の影響を色濃く受けています。

内部の特徴として、二層目から立ち上がっている心柱が挙げられます。周囲には、真言八祖行状図、金剛界三十七尊などが描かれており、文化的価値が高いものです。

まとめ:五重塔は釈迦の遺骨を祀る塔・仏教のシンボルとして日本全国で建てられている

五重塔は、釈迦の遺骨を祀る目的の塔です。仏教のシンボルとしても名高いものであるため、日本各地で建てられたと思われます。

その中で、国宝に指定されている五重塔は、9つあり一般に公開されています。

そんな五重塔は、耐震性のある建物としても注目されています。内部は、心柱やその周囲にある四天柱、12本ある側柱によって支えられています。

そして、各階に階段はなく、5つの屋根があるのみの一階建ての吹き抜けです。その建築様式は東京スカイツリーにも応用されています。

このように、飛鳥時代の建築が現代の耐震性に通じているのは、すばらしいことです。古き良き物を見直していくきっかけになるでしょう。

目次
閉じる