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臨死体験は脳の幻覚か?それとも現実体験なのか?現代の論争を解説!

目次

臨死体験とは死んでいるはずのときの体験

臨死体験を医学的にいうと、完全に心拍と呼吸が停止して意識がない状態のときに体験したことをいいます*₁。ここでは臨死体験の実際の報告と臨死体験がどのような仕組みで起こっているのかを解説します。

臨死体験の解明に向けたアプローチ

これまで臨死体験はどのような仕組みで生じるのか、科学的に証明することが難しく、「スピリチュアルなこと」「オカルトなこと」とされてきました。しかし、科学者たちが脳の仕組みと意識の解明に取り組み始めました。

欧米では、2000年頃から臨死体験についての論文が有名な医学誌『Lancet(ランセット)』に掲載され、財団が設立されています。『ランセット』の論文によると心肺停止後に蘇生した344人のうち18%にあたる62人が臨死体験を報告したそうです。

日本では筑波大でシンポジウムが開催され、医学や工学、脳機能のコンピューター開発などの専門家が集いました。また、心理学から捉えた論文が発表されています。

また報告された臨死体験には、共通した内容のものが多くあります。日本と欧米では少し内容が違うこともあります。以下で、実際の臨死体験と、報告された体験の共通内容、体験後の感想をあげてみます。

臨死体験の実例*₁

前述した筑波大でのシンポジウムで、実際の臨死体験の報告がありました。

つくば市の高校1年生(当時)だった少年は交通事故に遭い、脳を大きく損傷、意識不明の重体となりました。医師は、植物人間となる可能性が大きいと判断しました。それでも家族は少年の側で語りかけるなどしながら、1日の大半を過ごしました。事故後約2ヶ月が経ってから少年は意識が戻り、今では普通に日常を過ごしています。意識がない間に少年におこった臨死体験は以下の通りです。

生まれてからの回想

少年は事故からかなり時間が経ってから、暗闇の中に「自分独り取り残されているような」感じとなりました。そして産まれてから事故までのことがスライドのようにみえたのです。産まれた直後のことや命名されたときなど、少年自身の記憶にはないのこともみえたそうです。スライドによって、少年は「良かったことと悔いが残ったこと」がはっきりわかりました。スライドでみえたことに共通しているのは、家族から祝福されたことや心の繋がりがあった場面でした。

青白い顔の男との遭遇

その後少年が光の見えるほうへ行くと、白い着物を着た青白い顔をした男がいました。少年は男からの指示を受けて、黒と白のストライプに塗られた舟に乗りました。周りは次第に明るくなり、美しい花が一面に咲いている島のような所に着きました。そこにいる人達は『早くおいで』と歓迎してくれるようでした。

曽祖父と曽祖母との出会い

その場で少年は曾祖父に会い、「今ごろ何しに来たんだ。今度顔を見るときはきちんと自分の役割を果たしてから来い」と言われたのです。曾祖父は舟をこいだ男にも少年を戻すように指示し、少年は元の暗闇の中に戻されました。曾祖父との会話はテレパシーで行われたのですが、曾祖父とわかったのはのちに少年が祖母にこのことを話したからです。少年は曾祖父を写真でしか知りませんでしたが、そこで会った曾祖父の姿は写真とは違った風貌でした。

次に曾祖母が現れ、少年は「絶対来るな」と怒鳴られました。美しい場所にいた人達からは「早くおいで」という声が聞こえ、暗闇のほうからは心配する声がしていました。少年は美しいほうへ行こうとしたのですが、稲妻のような感じの美しいささやきが聞こえ、一言「帰れ」と。少年は暗闇に投げ込まれてしまいました。

さまよう少年

暗いときの時間感覚は「無限に続いている」ようでした。ぽつんと光が見えたので、行ってみると客船のような帆船がありました。死神のような青白い顔の男が先頭にいて、美しい場所にいた人達も乗っていました。「一緒に永久の旅に出よう」と男に声をかけられ、少年は帆船に乗りました。そして花園に深く入って行ったとき、魂が抜けたような感じとなり、それはただ体だけがあるような感覚でした。

やがて休憩所のような家に着くと、少年はたくさんのロウソクを見つけました。その中に、自分のロウソクを直感的に見つけたのです。休憩所を過ぎた所に2つの門があり、多くの人が並んでいました。ロウソクが消えるとどちらかの門に入って行きました。いわゆる「地獄と極楽の区別」のだったのかもしれません。

少年のロウソクが消えようとしたとき、片方の門から曾祖父と先ほどの稲妻のようなささやきが聞こえました。曾祖父がロウソクの火が消えないようにかばい、稲妻の声がささやくと炎は燃え上がり、少年は列からはじき飛ばされました。

その後、少年は花園にいることに気がつき、そこでは亡くなったおじに会いました。おじは泣きながら「まだ来るのが早い」と、少年を大きな舟に乗せて帰らせました。

目覚め

暗闇に戻ってからは、少年は明るいほうへ行きたいとは思いませんでした。そこに流れていた川には、自分の心と応援してくれている人の顔や心根が写っていました。少年はなぜ明るい所に行ってはいけないのかがわかり、しばらくしてから両親やみんなの声で目覚めたのです。

脳死状態での臨死体験実例*₂

臨死体験は脳死状態では生じないとされていました。臨死体験は脳の特殊な仕組みによるとされていたからです。しかし脳死状態だった患者に関する臨死体験の報告もあります。

米の心臓専門医師が脳手術に立ち会ったときの報告です。

患者は呼吸と心拍が停止、血圧がない、脳波は平坦な脳死状態でした。両耳にはイヤースピーカーがつけられ、脳幹機能の停止が示されていました。

脳への血流が停止していたのは35分間。その間に患者は頭頂部から意識が離脱して、手術室の様子を上から見下ろしていたそうです。意識が回復した後、医師が小声で話した内容や手術をしている自身の頭の状態を正確に話し、それは現実と一致していました。

臨死体験で共通して見られる事柄*₃

臨死体験を経験した人は世界でも数多くいることがわかりました。ここでは彼らに共通している事象をまとめてみました。

境界線としての「三途の川」や門

日本では「三途の川」を体験した人の割合が高くなっています。「三途の川」は生きる側と死ぬ側の境界のようです。欧米での境界は門や壁だったという報告が多くされています。

その他の共通内容

臨死体験として報告される内容で多くあげられるのは、幸福感を得ていたことです。他には、自身が死んでいるという感覚を得ることや自分を見下ろしていること。また暗闇から光へ向かう、すでに死んだ人と出会う、などのシチュエーションがあげられます。天界の美しい花や光などの観察もあり、逆に苦しみや恐怖といった体験報告はありませんでした。

また、体験後のほぼ共通した感想として、死ぬのが怖くなくなったことがあげられます。だからといって早く死にたいというわけではなく、残りの人生を精一杯生きたいという気持ちになったそうです。

臨死体験の仕組みに関する説*₄

臨死体験がどのような仕組みで生じるのか、いろいろと議論されていますが、主に3つの説に分けられます。その3つとは①脳内の現象という説、②現実体験という説、③そのどちらでもないという説です。ここではこの3つの説についてそれぞれ解説します。

①脳内の現象

脳内の現象とする説は、その仕組みについてもさまざまな議論があります。ここでは脳の幻覚という説と、脳量子論に基づいた説の2つを紹介します。

脳の幻覚?*₅

幻覚剤の研究をしている教授によると、幻覚剤を使って幻覚を起こさせたときの現象と臨死体験の現象がよく似ているとされています。このことから臨死体験は死に直面していなくても経験できる現象で、脳以外に原因があるのではないと主張しています。

量子論的に捉える説も!

量子論的な観点から臨死体験を解明しようとする動きがあります。例えば、2020年にノーベル物理学賞を受賞したR.ペンローズですが、研究している内容の1つに量子脳理論があります。量子論的に臨死体験を説明できる可能性があるとした学説で、かなりセンセーショナルな意見として注目を集めました。このように、医学だけでなく物理学からも注目されているのが臨死体験、つまりは死とは何かへの疑問は幅広い分野から解明が進められているのです。

②現実体験?

臨死体験は実際に体験した現実という説です。これは体験中に感じた体験者の体の感覚が最初から最後まで同じだったことに注目し、臨死体験したときの体を「心の体」としています。

③どちらでもない説?

長い間、自然科学で証明できないことは無視されてきたのです。実証主義で森羅万象を全て説明できるという考えは、間違いではないかと言われるようになりました。つまり臨死体験を脳内だけの現象とするのは無理があり、第3の立場で見つめ直す必要があると説かれています。また、たとえ臨死体験が脳と関連している現象としても、それを現実のこととして証明できるように検証するべきという説があります。

まとめ

死後の世界をみたのではないかという臨死体験。長い間「スピリチュアルなこと」「オカルトなこと」とされてきました。最近は、臨死体験を医学や科学の世界から研究されるようになってきましたが、どういう仕組みで臨死体験が生じるのか解明されるにははまだ時間がかかりそうです。ただ自殺を図り生還した体験者が残された人生を精一杯に生きようと考えるなど、臨死体験を経験したことによって考え方が変化するケースも報告されています。医師からみて『死』と診断されることは、肉体が機能しなくなることを意味するだけで、患者は本当は生きていると言えるのかもしれません。

*1:「臨死体験の討論をめぐる考察」 湯浅泰雄(桜美林大学)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmbs/4/1/4_KJ00005469321/_article/-char/ja/

*2:『脳死と臨死体験の記憶』齋藤忠資

https://home.hiroshima-u.ac.jp/tadasi/ronbun-12.pdf

*3:「分析心理学的見地からみた臨死体験」 人見佳枝https://wired.jp/2018/10/14/near-death-experiences-psychedelic/

*4:幽体離脱と臨死体験の仕組みとは~量子脳理論と自己シミュレーション仮説

*5:「臨死体験は死後の世界の証拠ではない?実は脳の働きによる幻覚の可能性:研究結果」

https://wired.jp/2018/10/14/near-death-experiences-psychedelic/

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