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気管切開のメリット・デメリットとは?体験談も合わせて紹介します

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目次

気管切開とは呼吸をらくにするための手術

気管切開とは呼吸しづらさを解消するために、喉に管を入れて呼吸しやすくする手術のことです。緊急時に医師から家族に判断を問われることの1つが気管切開。どこまで治療を受けるのか、難しい判断が必要になることも。ここでは気管切開とはどういったものか、またそのメリット・デメリットについて解説します。

気管切開手術

気管切開は呼吸をらくにするための医療処置ですが、胃ろうと同じように延命治療になるのではないかと、議論されています。医師は心臓を止めないことや呼吸を止めないための治療を最優先させます。結果として患者がチューブでつながれて、ベッドで寝ている姿を見つめる家族は苦悩しますが、同じように医療従事者も苦悩します。

今回は気管切開の手術した後の介護生活がどのように変わるか、患者自身にとって気管切開のメリット・デメリットをみていきましょう。

気管切開が必要とされる人

気管切開とは呼吸をらくにするために、喉の中心あたりを切って気道まで管(気管カニューレ)を入れます。カニューレを入れることで痰をとりやすくなって呼吸しやすくなるそうです。

呼吸状態がよくないと、医師は「気管切開が必要」と判断します。ここでは気管切開が必要と判断される人を具体的にあげてみます。

気道が狭くなって呼吸しづらい人

気道が狭くなって呼吸が苦しい人や、寝たきりとなって舌が落ち込み窒息の可能性がある人が対象となります。また痰が多い場合も同様。自分で痰を出せない場合や誤嚥性肺炎を繰り返す場合には、痰を吸引するために気管切開が必要です。

ただしアレルギー症状で痰が多くなっていることがあります。アレルギーの治療をすることで痰が減ることもあるので、痰が多い場合は原因を考えてから、気管切開に踏み切ったほうがよさそうです。

気管切開を閉じる可能性がある人

一旦、気管切開をするとそのまま最期まで気管切開した状態が続くと思われがちですが、呼吸状態がよく誤嚥の心配がなくなると、気管切開の孔を閉じることができるようです。

「気管切開孔の経過追跡ー切開孔は閉鎖できるのかー」*₂によると風邪など急性上気道炎などで、上気道が急に炎症して狭くなった場合は、気管切開をしても閉じる可能性があります。気管切開手術をしてから閉じるまで最短で21日間、平均すると96日前後。

脳梗塞で倒れて気管切開した後、全身のリハビリを懸命に頑張って、孔を閉じることができた人もいました。のどの傷跡はよくみればわかる程度にまでなります。

肺が膨らみにくい人には人工呼吸器*₁

自発呼吸が少ないと、肺が膨らみにくくなるために人工呼吸器が必要。人工呼吸器から空気を送って肺を膨らませるわけです。

人工呼吸器が必要になったとき、始めは喉や鼻から気管内にチューブを入れる気管挿管をして人工呼吸器をつなげます。気管挿管の処置を長く続けると粘膜が傷つき、感染症の原因となるようです。

しかし呼吸状態が2週間以上たっても改善されないときは気管切開をした上で人工呼吸器に接続します。

気管切開後の看護

気管切開手術を受けた後、家族は介護の負担が増えることが知られています。ここでは家族にとってどのように生活が変わるかをみていきましょう。

痰の吸引

とにかく痰の吸引が必要となります。口や鼻から呼吸する場合は唾液などで空気が加湿されますが、気管切開すると加湿されないため痰がかたくなりがち。痰を頻回に引かないと窒息してしまう可能性があるそうです。夜中も何度か痰を吸引しなければいけなくなります。

カニューレとガーゼの交換

気管カニューレを2週間に1回など、定期的に交換。また気管カニューレを固定するためのガーゼは汚れがひどいときは1日に何度も交換しなければいけません。皮膚トラブルや感染を防ぐためです。ガーゼを交換するときは膿や血が出ていないか、肌の状態をよく観察することが必要です。

口中のケア

口の中を清潔にしましょう。気管切開をしても唾液を誤嚥する可能性はゼロになるわけではあないそうです。口中が汚れていると雑菌が繁殖し、唾液を誤嚥して肺炎にかかりやすくなると言われています。口中を濡れたガーゼでふくことや歯磨きは日課の1つとなるでしょう。

気管切開のメリット・デメリット

気管切開をすれば患者にとってメリットばかりというわけではないため、気管切開は延命治療の是非として議論の筆頭にあげられます。ここでは患者にとって気管切開をすることが、今後の生活にどのように影響していくのか、メリットとデメリットあげてみていきましょう。

気管切開のメリット

患者にとっては呼吸をすることがらくになります。呼吸をすることにエネルギーを使って痩せていた患者が、気管切開をして太ったというケースがあるほどです。また、家族にとっても窒息するのではないかという心配がなくなります。

気管切開のデメリット

定期的な痰の吸引が必要です。頻回に痰を吸引しなければ、窒息する可能性があります。家族の精神的・神経的負担が大きくなることも問題。

また気管切開をした穴から菌が入りやすいために、肺炎になりやすいことがあげられます。

さらに喉を切ってカニューレを入れているために出血することがあり、カニューレを固定させるバンドで皮膚があれて潰瘍ができることも。

気管切開手術後の看護は、家族には相当な負担となるために病院から退院できないケースも多くあるようです*₃。

声を出せなくなる

気管切開をすれば基本的には声を出せなくなるため、コミュニケーションをとりにくくなるとされています。

ただし、全く声が出せなくなってしまうわけでは無いようです。声帯に空気の流れがあると声が出るわけで、普通は息を吐きながら声を出します。しかし息を吸いながら声を出すことも可能であり、気道より細いチューブを入れて、息を吸いながら声を出す人もいるそうです。

また、気管カニューレとしてスピーチカニューレを使えば、話すことができるそうです。スピーチカニューレには小さな穴があるので、空気の通り道ができます。これによって声を発することができるのです。

気管切開や延命治療に対する医師と患者側の考え

医師は窒息する可能性があるのなら呼吸を継続させるために気管切開を患者や家族にすすめます。しかし家族にとっては患者が回復する可能性があるかどうかも、気管切開や延命治療に踏み切る時の判断基準です。ここでは4人の患者を例としてあげてみましょう。

延命処置拒否の事前指示書を持って搬送された患者*₄

ある患者は延命措置を拒否する旨の事前指示書を持って救急搬送されました。持病の治療として気管切開が必要となるかもしれない旨を伝えると、本人は「苦しいのをとってほしい」とだけ意思表示したそうです。家族は回復の見込みが少しでもあるなら治療を望むという意見と、本人の希望通りに治療を望まないという意見に分かれ、医師は苦悩しました。

つまり、回復の可能性があるとき、気管切開などの措置は延命治療にはならないとされています。また患者自身または家族からも延命を願われるなら、医師は治療を続けることが可能です。しかし回復の見込みがわずかとはいえあるにも関わらず、患者自身または家族の考えがまとまらないとき、医師は判断できないそうです。

93歳の寝たきり女性*₅

異物を喉に詰まらせて搬送されてきた女性。気管内挿管(気管切開の前段階)にして胃ろうを造りベッドの上で生きています。担当医は「彼女にとって幸せなのか?」と苦悩。最期を迎えるかどうかの判断を、医師に丸投げされては困ると心情を吐露しています。

状態急変で救急搬送された98歳

状態が急変して救急搬送された患者。98歳という年齢から考えて、救急搬送先の医師は「寿命」と判断したそうです。しかし、家族は「何とかしてほしい」と懇願してきたために医師は、延命治療をせざるを得なかったと証言しています。

脳卒中で倒れた62歳男性

ある男性は脳卒中で倒れ、意識不明状態となりました。医師から気管切開をすすめられ、しぶしぶ家族は同意。しかし2週間後に男性は他界。たった2週間のために気管切開をしてしまったことを、家族は後悔したそうです。

まとめ

病気や終末期に医師から気管切開の手術を提案されることがあります。医師は確かに家族の気持ちを考え、患者が呼吸しやすくなることを考えたうえでの提案です。しかし、気管切開手術後に家族に要求される看護の負担は相当なものになります。

意思表示をできない状態になる前に、まずは家族と終末期にはどこまでの治療を望むのかをよく話し合っておくことが必要と言われます。それでもその「いざ」となったときには迷いが出ます。

「死を受け入れる」ことで、「死」が目前に迫っても穏やかになれるのではないかと指摘する医師もいます。しかし私たちは「死」はまだ先のことと思いがちです。「死を受け入れる」ことは簡単なことではなく、何度も話し合うことで死を受け入れることができるようになるのかもしれません。 

*1突然突きつけられる高齢者の気管挿管(気管切開)の決定ー後悔しないために

https://brain-gr.com/tokinaika_clinic/blog/home-medical-care/tracheal-intubation/

*2気管切開孔の経過追跡ー切開孔は閉鎖できるのかー富岡利文ほか

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/101/11/101_11_871/_pdf/-char/ja

*3「延命か自然な死か」家族に迫られる重い決断ー終末期医療の現実

https://news.yahoo.co.jp/feature/1145

*3延命処置拒否のリビングウィルを持った救急患者の治療方針の決定ー看護実践情報

https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/rinri/text/case/jirei_03.html

*4幸せに死にたいのなら医療頼みをやめようー東京女子医科大准教授・川嶋 朗

https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK1301K_T10C12A8000000?page=3

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