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胃ろうは延命治療か?メリット・デメリットを解説しながら、胃ろうの評価を海外と比較!

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目次

胃ろうとは口から食事をとれない人の胃に施す医療措置*₁

胃ろうは飲み込みが悪くなって口から食事をとれなくなった場合、胃に穴をあけてカテーテルを通す医療的措置をいいます。カテーテルを通して胃に直接栄養を注入するわけですが、延命治療なるかどうかで論議されることが多くあるようです。

日本では近年、胃ろうを造る人は減ってきたそうですが、それでも40万人とも言われます。今回は胃ろうのメリット・デメリットなどを詳しくみていきながら、胃ろうに対する日本と海外との考え方の比較をしていきます。

胃ろうの手術

胃ろうを造る手術は比較的に簡単だそうです。ここでは実際にかかる手術時間や必要とされる入院日数をみていきましょう。

手術にかかる時間と入院日数

手術にかかる時間は長くないと言われています。内視鏡を使って腹部に小さな穴をあけ、カテーテルを通します。そしてカテーテルが抜けないように固定。時間としては15~30 分程度だそうです。全身麻酔でなく局所麻酔での手術で、入院は1~2週間ぐらい。

胃ろう以外の方法

口から食事をとれなくなった場合に栄養を体内に入れる方法として、胃ろうの他にも方法があります。鼻から胃までチューブを通して栄養を注入する方法(経鼻胃管栄養)と点滴で血管に栄養を注入する方法です。どちらも手術の必要はありませんが、経鼻胃管栄養はチューブが喉を通っているので常に違和感があり、静脈栄養法はカテーテルの挿入時に肺を傷つけるなどのデメリットがあります。

胃ろうが必要とされる人

口からとる食事だけでは栄養を十分にとれなくなった人に、胃ろうがすすめられます。実際に口から食べられなくなる原因として何があげられるのか、また回復して胃ろうをはずせる人とはずせない人の違いをみていきましょう。

口から食事を十分にとれなくなる理由

口から食事をとれなくなる原因として、飲み込みが悪くなった場合と消化器系に問題がある場合があります。消化器系の病気があって食欲が落ちた場合、胃ろうを造ってもあまり意味がないかもしれません。胃ろうから栄養剤を注入しても、体内に栄養が吸収されるとは言えないからです。食事を十分にとれなくなった原因がどこにあるのか、コミュニケーションをとりにくい患者の場合は、特に見極めが肝心になります。

飲み込みが悪くなった人(うまく飲み込めない)*₂

口からの食事を続けることで誤嚥性肺炎を引き起こしやすい人は、医師から胃ろうをすすめられるようです。誤嚥性肺炎は飲み込んだ物が気管支に入ってしまうことが原因。つまり噛んで飲み込む力が弱くなった人に起こりやすいです。

飲み込みが弱くなるのは脳や神経などの病気で口から食事をとれなくなった場合と高齢や認知症が進んだ場合が考えられます。胃ろうを造るかどうかの意思を確認しづらい患者を持つ家族は、胃ろうを作るかどうかの判断が迫られます。

回復して胃ろうをはずせる患者

胃ろうを造れば、口から二度と食べられなくなるケースばかりではありません。脳梗塞など脳血管障害のために飲み込みが悪くなった場合は、まずは栄養状態をよくすることが優先。治療として胃ろうを造って必要な栄養を注入していけば、機能が回復して飲み込む力が戻ることもあるそうです。またたとえ胃ろうをはずせなくても、元気に過ごせるようになるケースもあります。

胃ろうのままとなる患者*₁

高齢者や認知症が進んだ患者は、胃ろうをはずせる可能性が低いようです。また胃ろうを造って栄養状態を改善したとしても、QOL(quality of life)が改善しないことがあります。

家族が「らくにしてあげたい」と思っても、胃ろうから栄養を注入しているために生き続けているケースもあるそうです。

胃ろうのメリット・デメリット

胃ろうは誤嚥性肺炎を防ぐための医療的措置です。胃ろうを造った場合のメリット・デメリットを考えたうえで、意思決定をしましょう。ここでは胃ろうを造った場合のメリット・デメリットをあげてみます。

胃ろうのメリット

栄養剤を胃に直接入れるので、誤嚥性肺炎を起こす可能性が低くなることが第一のメリットです。

また鼻からチューブを入れる経鼻胃管栄養と違って、胃ろうは機能が回復すれば、口から少しずつ食事をとることができます。経鼻胃管栄養のように喉をチューブが通っていると、誤嚥しやすくなるために口からの食事はできないそうです。

さらに胃ろうのカテーテルは固定されているため、経鼻胃管のチューブより抜けにくいのもメリット。

胃ろうのデメリット

デメリットは、胃ろうを造るために手術をしなければいけないこと。またカテーテルを定期的に交換する必要もあります。誤嚥を防ぐために胃ろうを造りますが、誤嚥性肺炎を完全に防止できるわけではありません。唾液を誤嚥して肺炎を引き起こす可能性があるからです。

胃ろうにしたときの費用

胃ろうを造る場合は保険が適応されますが、自己負担金があります。手術を受けるときと毎月の栄養剤などにかかる費用について解説します。

胃ろうを造る手術にかかる費用

1週間程度の入院となる場合が多く、費用は10万円前後と言われています。ただし、「高額療養費」制度の対象となって申請した場合、上限の金額を超えて支払った金額は払い戻されます。

毎月のケアにかかる費用

毎日注入する栄養剤を医師が処方する場合、薬剤費として医療保険が適応されます。1か月に約3万円。カテーテルの交換にかかる材料費は、1か月に換算すると数千円~1万円だそうです。

胃ろう手術後に行う看護*₁

胃ろうは腹部に穴を開けてカテーテルを通すわけですから、手術後はケアが必要です。どのようなケアがあるのかをみていきましょう。

皮膚トラブルを起こしたときの対応

腹部にカテーテルが通っているため、カテーテル周辺に皮膚トラブルを起こしやすくなります。つまり酸性の胃液や汗、カテーテルとの摩擦などによって皮膚が刺激を受けるためです。皮膚が赤くなっていないか、血液や滲出液が出ていないか、など毎日注意深く観察して清潔に保ちます。清潔にして痛みや出血の異常がなければ、本人は気持ちよく過ごすことができます。

口腔ケアの必要性

胃ろうを造って、口から食事をとっていなくても誤嚥性肺炎になる可能性はゼロにはなりません。口腔ケアを怠ると口の中の雑菌が繁殖。寝ている間に唾液を誤嚥して肺炎になる可能性があるそうです。歯ブラシや濡れたガーゼで、こまめに口の中をふいて清潔にしましょう。

姿勢に注意

ベッドに寝た状態でいることも注意が必要です。胃ろうから注入した栄養剤が口まで逆流して、飲み込んでしまう場合があるため。飲み込んだ栄養剤が気管支や肺に入れば、誤嚥性肺炎となるかもしれません。逆流防止のため注入を終えてしばらくは、体を起こした状態でいるといいそうです。

自己抜去防止の対策

認知症患者の場合、カテーテルを認識できずに抜いてしまう可能性があります。もしカテーテルが手術して3週間以内に抜けた場合は、早急に医師に連絡をとる必要があります。それは穴が完全にできていないためで、医師による処置が必要となるからです。手術後3週間以上経って穴ができている場合で指導を受けていれば、カテーテルやチューブを挿入し直すことができます。

海外での胃ろうの評価*₂

日本では胃ろうで栄養を補っている高齢者は40万人とも50万人とも言われています。胃ろうから栄養を補うことで体力がついて、QOLが上がったという高齢者もいれば、ただ生かされているだけに見えるという人も。海外では胃ろうをどのように捉えているのでしょうか?

海外では胃ろうは非倫理的

アメリカやオーストラリア、北欧では胃ろうは評価されていないようです。口から食事をとれないということは、体の機能が落ちているということ。海外では胃ろうを造って無理に栄養剤を体内に注入することは、非倫理的という考えを持っています。また、欧米ではただベッドの上で過ごすことに意味はないとする考えが主流です。近年、スウェーデンでは胃ろうの手術は行われていないと言われています。

日本での評価と比較*₃

日本では胃ろうを造った後、約2年間生存するのに対して、欧米では約2か月間の生存という報告があります。言い換えると、日本では胃ろうを造ると約2年間は介護生活となるようです。

この2年間に関して「だらだら生きるわけではなく、その人の持っている寿命しか生きられない」という見方があります*₄。一方、胃ろうにしているから意識がないまま何年も生き続けていると言われるケースもあるのも事実です。

胃ろうを造っていない人との比較

胃ろうを造った人と造らなかった人とでは、終末期はどのように違うのでしょうか?あくまでも統計の結果から言えることですが、比較してみましょう。

QOLの比較*₃

胃ろうを造った人は胃ろうを造らなかった人と比べ、てQOLが高くなるという統計*₆があります。QOLが上がって外出するなど行動範囲が広がり、他の疾患を治療できたという人も。

しかしその統計によると、QOLが低下して介護負担が増える期間も長くなり、胃ろうを造ったことを後悔する人もいるそうです。

BMIの比較*₅

BMIとは肥満かどうかを計る指数。BMI = 体重÷(身長)²で求められ、BMIの数値が12に近づけば、死期に近づくのではないかという報告があります。しかし胃ろうを造った人はBMI数値が10を下回っても生存が確認されたそうです*₅。

まとめ

胃ろうは延命治療だからと拒否反応を示す人が多いと言われます。実際、口から食べる楽しみがなくなるのは辛いこと。機能が回復して胃ろうがはずされるなら、一時的な治療として我慢できるかもしれません。しかし終末期の場合は、胃ろうを造るか造らないかの判断が難しいとされています。胃ろうを造っても意識のない状態が続く人もいれば、楽しんでいる人もいるそうです。

胃ろうを選択するか選択しないかは、その答えは本人や家族が考えたうえで出すもの。胃ろうを選択しないことを責めることが問題なように、胃ろうを選択することを責めるのも問題です。

終末期をどうしたいのかを、家族と話し合っておいてほしいと言う医師がいます。胃ろうを造って長く生きるとすれば、長くなった余命はどのような意味があるのでしょうか?

余命がもたらせる意味を考えた上で意思決定をしましょう。たとえベッドの上で過ごすだけでも「誰かのために生きる」のなら、それも立派な生きる目的です。「親孝行するため」「心の整理をつけるため」などもそうです。終末期にどこまで治療を望むのか、生きる意味や目的を真剣に考えないといけないでしょう。

*1胃ろうとは?メリット・デメリットと介護の注意点

https://www.minnanokaigo.com/guide/disease/stomach-wax/

*2北欧では寝たきりや胃瘻患者が少ないって本当?その理由は?【QOLを重要視した人生観や医療費削減の方針のため】

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3898

*3「胃ろうは良くない」の本当の意味 新潟医師会報より

https://www.niigatashi-ishikai.or.jp/newsletter/academic/201903272572.html

*4「愛する人を生かしたければ胃瘻を造りなさい」ー丸山道生 著

*5 BMIの推移を根拠とした高齢者の看取りの時期 および死期の推定ー川上嘉明 前田樹海

https://www.tau.ac.jp/outreach/TAUjournal/2014/03-Kawakami-2.pdf

*6 2013年11/12中日新聞朝刊掲載 「胃ろうのジレンマ概念図」

                           ー草津総合病院 伊藤明彦医師

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