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ゲノム創薬に期待が集まる!従来の薬の作り方との違いとオーダーメイド医療を解説

目次

ゲノム創薬とは遺伝情報から薬を作ること

ゲノム創薬という言葉を耳にするようになってきました。ゲノムとはDNAのすべての遺伝情報のこと、創薬とは新しい薬を作ることを意味します。簡単に言うとゲノム創薬とは、人の遺伝情報をもとにして、病気に効果的な薬を理論的に開発しようとすることです。今回はゲノム創薬を従来の薬と比較し、今後の医療へどのように活用されていくのかを解説します。

従来の創薬とゲノム創薬の違い*₁

近年、人のゲノム情報が解読され、その情報をコンピューターで解析できるようになってきました。人の膨大な遺伝子やタンパク質の情報の中から病気に関連するものを選択し、薬の開発につなげていこうというのです。ゲノム創薬を従来の薬と比較してみましょう。

従来の創薬

従来の創薬はまさに地道な研究と作業の繰り返し。1つの薬を開発するだけでも多くの労力と時間が必要とされ、新薬を開発した後は安全性を確認するために何度も試験や治験が繰り返されます。1つの薬が売り出されるために要した時間や労力は膨大です。

病気の原因と結合する化合物の探索

まず基礎研究によって、病気の原因となるタンパク質を特定。次にそのタンパク質と結合できる化合物を探します。製薬会社が持っている数百万種もの化合物の中から1つずつ化合物を取り出して、問題のタンパク質と結合するかどうかを調べていくわけです。近年では数百万種の化合物から薬の候補となる化合物を選択する作業は、自動化されています。

安全性や効果の確認

薬の候補となる化合物がみつかれば、その効果を確かめます。安全性を確認するために動物実験や、体内に入った薬がどのように変化していくかをみる薬物動態試験が何度も繰り返し行われるわけです。実験や試験で安全性が確認されると、次は治験。薬としての効果があるか、副作用はないかを人で確認します。健康な成人から投与を始めて、そして患者で確かめるわけです。治験によって安全性や薬の効果などを厚生労働省が認めて、やっと販売となります。

莫大な費用と時間と労力が必要

病気の原因となるタンパク質をみつけることから始まって、厚生労働省から承認がおりるまでにかかる年月は20年近く。言い換えると1つの薬を開発するためには、莫大な費用と時間と労力が必要です。

それでも重い副作用の報告で自主回収

莫大な費用と時間と労力を費やして送り出した薬であっても、重い副作用が表われることがあります。例えば1993年に販売された抗ウイルス薬「ソリブジン」。帯状疱疹にかかったときにのむ薬ですが、抗癌剤治療を受けていた人がのむと白血球数が減少したそうです。ついには死にいたったという報告が多くあげられ、企業は自主回収しました。

ゲノム創薬

ゲノム創薬は遺伝子を調べて合理的に薬を作るとされています。まず病気の原因となる遺伝子を同定。その遺伝子がつくる酵素や受容体のタンパク質ついての情報や機能、構造を調べ、原因となる遺伝子やタンパク質に働く薬を作るそうです。

従来の創薬では候補となる化合物の数だけでも膨大。ゲノム創薬の場合は候補となる化合物を絞りこんでいくことができるため、短期間での創薬が可能と言われています。

病気の段階ごとの創薬が可能

病気にはいろいろな段階で発症するものがあります。タンパク質の働きを研究することで、それぞれの段階を解明できるようです。病気の段階ごとに効果を発揮する薬が開発されれば、病気のタイプに適した薬を使うことができるとされています。

ゲノム創薬のメリット*₁

ゲノム創薬はゲノムと病気の関連性から作り出されるそうですが、ゲノム創薬のメリットをあげて整理してみます。

体への負担が少ないこと:従来の薬との違い

ゲノム情報によって1人ひとりにあわせた薬を選択するので、薬としての効果があり、副作用が少ないことが期待されています。人の遺伝情報の差は0.1%、それが個人差になるそうです。同じ薬を使ってもよく効く人と効かない人がいるのは個人差によります。つまり、わずかなDNA配列の違いが個人差として表われるわけです。

また従来の薬は炎症などの症状を抑えるものが多いのですが、ゲノム創薬が目指しているのは病気そのものの原因に働きかけること。要するに、疾患となる原因の遺伝子やタンパク質に作用する薬を1人ひとりにあわせて投与することで、効率的に病気を治せるそうです。

コストや期間:製造の違い

ゲノム創薬は遺伝情報をもとに病気となる原因を特定するため、薬の候補となる化合物を絞りこめる可能性が高くなります。論理的に開発して製造することで、あまりコストをかけずに短期間で作られるようになるそうです。

ゲノム創薬の開発を期待している病気とは?*₂

癌や糖尿病、高血圧など多くの病気は遺伝子が関係していると言われ、遺伝子に関わる病気はゲノム創薬が期待されています。特に癌に関しての研究が進められているようです。

癌は遺伝子が変異するために、正常な細胞が癌細胞となって増殖していきますが、癌のタイプは、肺癌や胃癌など癌ができる部位や個人の体質によってさまざまです。つまり癌は遺伝子が関わっているために、1人ひとりで癌のタイプが違うということになります。

従来の抗癌剤:副作用に悩まされる理由

従来の抗癌剤は、癌細胞が異常に増殖することを抑えようとします。つまり癌細胞が分裂しないように働くわけです。しかし抗癌剤は正常な細胞にも作用することがデメリット。特に抗癌剤の影響を受けやすいのが、毛根や胃腸粘膜。細胞分裂がさかんに行われるために、副作用として髪の毛が抜けて吐き気に悩まされるようになるそうです。

分子標的薬:副作用が少ない理由

分子標的薬は癌細胞にだけ働きかける薬だそうです。つまり、癌細胞の遺伝子やタンパク質を標的にして攻撃するために、細胞増殖を抑えられると言われています。一方、正常な細胞には働かないため、副作用が少ないようです。

遺伝子パネル検査:簡単になった遺伝子検査

2019年、癌に関して「遺伝子パネル検査」が保険適用となりました。分子標的薬を使う前に、変異している遺伝子を調べる必要があります。癌に関わる遺伝子は数100種以上。1種類ずつ調べるとそれだけで膨大な時間がかかりますが、遺伝子パネル検査では100種類以上の遺伝子を一度に検査できます。

つまり遺伝子パネル検査は、癌に関わる多くの遺伝子をまとめて検査できるのです。

ゲノム創薬によってオーダーメイド医療を実現!*₁

オーダーメイド医療とは、1人ひとりの体質や病気のタイプにあわせて治療することをいいます。オーダーメイド医療に向けてどのような医療が展開しているのでしょうか?

オーダーメイド医療に向かう:最近の医療

今までは同じ病気にかかれば、同じ治療が行われてきました。例えば癌にかかった患者は、みな同じ治療を受けていたわけです。従来の抗癌剤では効果や副作用は1人ひとりで違い、効く患者もいれば効かない患者もいます。最近では患者の遺伝子をまず調べ、その患者にあう薬を選択して投与するそうです。

文部科学省のオーダーメイド医療に向けたプロジェクト:将来に向けた医療

文部科学省が、オーダーメイドの医療を実現させるためにプロジェクトを推進。まずはバイオバンクに多くの人のDNAなどを集めて遺伝情報を解析していきます。次に個人差の生じる塩基配列を研究し、また病気や薬の効果・副作用との関連性も調べていくわけです。将来のオーダーメイド医療に向けて、国が動いています。

ゲノム創薬の問題点*₂

オーダーメイド医療を実現させるには、さまざまな問題を解決していかなければいけないようです。

遺伝子を解明する困難

人のゲノム情報量は膨大で、病気の原因となる遺伝子を見つけるのはまだ困難なことのようです。癌の遺伝子パネル検査を行ったとしても、問題となる遺伝子がみつからない場合があり、また変異した遺伝子がみつかったとしても、治療法が確定していない場合もあります。遺伝子変異による治療を行えるのは、まだ10%程度だそうです*₃。

製薬業界の厳しい事情

製薬業界では創薬に関する研究は経営的に厳しいという現実があり、ゲノム創薬という新しい技術に取り組むためとなると、相当な投資が必要です。投資の負担は経営に影響を与えるため、ゲノム創薬に取り組むのはリスクが高いという声があがる企業もあります。

人材の問題

オーダーメイド医療においては、従来の治療とは違う検査や薬を使います。遺伝子を扱うために、専門的な知識や経験をもった人材の育成が必須なわけです。また遺伝子の検査をするということは、倫理的な配慮も必要。検査結果によっては、家族や親戚にまで影響を及ぼすこともあるそうです。

まとめ

遺伝子と病気の原因との関連性から、薬を開発するゲノム創薬。まだまだ一部の人ですが、効果があって副作用が少ない薬を選択できるようになってきました。さらに膨大なゲノム情報を比較していくことで、希少難病性の病気の解明や薬の開発にも繋がるのではないかと期待されています。まさに夢のようなゲノム創薬。

しかしオーダーメイド医療を現実にするには、まだまだ前途多難でもあります。それでも研究者は病気で苦しむ人のために努力を重ねる日々。ゲノム創薬によって、オーダーメイド医療が実現されるように期待したいところです。

出典:ニュートンムック「くすりの科学知識」

*1バイオのはなしー中外製薬

https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/phc/phcp09.html

*2バイオと製薬ー製薬オンライン

https://www.seiyakuonline.com/essay/essay006.php

*3教えてがんゲノム医療ーがん遺伝子パネル検査とは

https://gan-genome.jp/test/ol.html

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