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長寿遺伝子サーチュインとは?長寿の人だけが持っている遺伝子?サーチュインの秘密を解説
サーチュインとは長寿遺伝子
1997年にフランス女性が122歳で死去しました。フランスの国立医学研究所が公表したところによると122歳というのは『年齢が正確に記録された史上最高齢』だそうです。医学的に人の寿命は125歳が限界という説があり、1997年以降最高寿命は記録は塗り替えられていません。人の寿命に関する研究が続けられていますが、今回は老化の原因やサーチュイン遺伝子の効能、サーチュイン遺伝子を活発化させる方法、そして医療にどのように生かせるのかについて解説します。
老化の要因
老化の要因として挙げられるのは酸化ストレスや紫外線の浴びすぎ、放射線、そしてタバコなどです。これらの要因で細胞が傷つきその傷が修復されにくくなると、細胞が老化しシワなど体にも影響がみられます。紫外線やタバコは日常の中で摂取量を減らすことは可能です。しかし、酸化ストレスの原因となる活性酸素を減らすことは難しいと言われています。ここでは活性酸素がどのように体に影響を及ぼすのかについて解説します。
酸化ストレスとは活性酸素が過剰に作られること*₁
酸素は人にとってなくてはならないもので、脳細胞はたった4分の酸素不足で死ぬとされています。しかし、体に取り入れられた酸素は反応しやすい活性酸素に変わり、この活性酸素はDNAを傷つけ、細胞の機能を低下させてしまいます。細胞の中にはミトコンドリアという小器官があり、ミトコンドリアは取り込んだ酸素をエネルギーに変えます。このとき活性酸素が作り出されるのです。生命活動に欠かせない酸素をエネルギーに変えることで活性酸素が生まれ、結果として細胞を傷つけ、老化を招いてしまいます。
活性酸素のプラスの面*₂
とはいえ、活性酸素は全て悪く除去しなければいけないわけではありません。白血球で作られる活性酸素は免疫などで重要な役割を果たします。必要以上に作り出された活性酸素が害となるので、体内でのバランスが重要となります。
サーチュイン遺伝子が活性化するとどうなる?*₃
サーチュイン遺伝子を活性化すると以下のような点が挙げられます。
①活性酸素を取り除く
②細胞修復
③脂肪の燃焼
④糖尿病など生活習慣病の予防
では、サーチュイン遺伝子はなぜ長寿遺伝子と言われるのか、それを活性化させるにはどうしたらいいのか、解説します。
サーチュイン遺伝子はどうして長寿遺伝子か?
DNAは長い鎖のような状態ですが、そのままの状態では傷つきやすいのです。しかしDNAがタンパク質に巻きついた状態では傷つきにくく、このタンパク質に巻きつきやすくするのがサーチュイン遺伝子の働きとされています。
サーチュインを活性化させるには?
食事制限とポリフェノールの1種であるリスベラトロールの摂取で、サーチュイン遺伝子が活性化されたそうです。サーチュイン遺伝子は誰もが持っていますが、いつも活性化しているわけではないのです。1日のうちでも活性化するときと休んでいるときがあるとされています。
食事制限
食後に血糖値が上昇して、その血糖値を抑えるためにインスリンが分泌されます。インスリンが分泌されるとサーチュイン遺伝子の働きは悪くなり、空腹を感じているときは働きがよくなるという報告があります。食事量を減らし過ぎると栄養不足で体が不調になりますから、腹八分を心がけるといいそうです。
リスベラトロール
リスベラトロールはポリフェノールの1種です。赤ブドウの皮に多く含まれている栄養素ですが、リスベラトロールはサーチュイン遺伝子の働きを活性化させて細胞内で活性酸素を取り除く働きがよくなったと報告されています。
病気に役立てるための最近の研究*₄
サーチュイン遺伝子が病気とどう関連しているのか、さらに薬などでサーチュイン遺伝子の働きをコントロールして、病気の治療に役立てられないか研究が続けられています。
マウスではサーチュイン遺伝子を活性化させて効果があると言われているのが慢性心不全や筋肉が落ちていく難病の筋ジストロフィーです。逆にサーチュイン遺伝子の働きを弱くすると、癌細胞の生存や転移を抑制したという報告もあります。糖尿病や認知症などの治療についても研究が進められています。
誰もが健康で長生きできる?
人のサーチュイン遺伝子には個人差があり、特に長寿の人のサーチュイン遺伝子は特定の型が多いことが報告されています。ヒトの寿命の長さは、遺伝子だけに特定されるものではなく環境などにも大きく左右されるもの。高齢化社会の日本ではいかに健康寿命を延ばしていくかが問題となります。サーチュイン遺伝子の研究によって誰もが健康で長生きできるようになる時代は来るのか、今後の研究に期待したいところです。
出典:「ニュートン」2020年7月号
*1:Dr.Gotoの老化研究所『健康長寿』
https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/aging/doc3/doc3-03-1.html
*2:eーヘルスネット(厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイト)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
*3:公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/iden-rouka.html
*4:札幌医科大学医学部薬理講座