本ページはプロモーションが含まれています。
医療用麻薬モルヒネとは?脳内で分泌されるモルヒネと死期との関係も解説
モルヒネとは麻薬でもあり薬でもある
モルヒネという言葉を聞くと、麻薬や末期癌の緩和ケアを連想する人がいます。今回はモルヒネが持つ麻薬としての顔と薬としての顔、そして脳内から分泌されるモルヒネについて解説します。
モルヒネは単なる痛みを忘れさせる麻薬なのか?もしくは痛みを和らげる薬なのか?
たとえ鎮痛剤としてでもモルヒネを使えば、麻薬中毒になるのではないかと不安を覚える人がいます。あるいはかえって寿命を縮めてしまうのではないかと。このようにモルヒネはネガティブなイメージがあります。もともとどんな薬にも毒の部分があり、「毒をもって毒を制す」と言われるように、病気の毒を薬の毒で抑える、つまり薬の毒をうまく使うことで気になる症状を抑えこみます。
ここではモルヒネを鎮痛剤として使った感想と薬効(薬としての効果)、薬としてどのように作用するのかを解説します。
モルヒネを鎮痛剤として使った感想*₁
実際に首を骨折して鎮痛剤としてモルヒネを使ったことのある人の体験談によれば、モルヒネを投薬されると痛みはやわらいだと言います。でも完全にとれたというわけでもなく、頭の中がフワフワとした感じで、痛みが気にならなかったというのが正直なところのようです。
薬の安全性は薬効量と致死量の関係で決まる
薬の安全性は、薬効量と致死量の差で決まり、差が大きいと薬としての安全性が高いことになります。たとえばカフェインの場合、薬効量を1とすると致死量は100。モルヒネは薬効量を1とすれば致死量は15です。
現代医療においてモルヒネの利用価値が広がった*₂
これまでモルヒネは末期癌の患者に使われると考えられていました。近年は痛みの強さでモルヒネを使うかどうかを判断し、初期の癌でも痛みが強ければ、モルヒネを使って治療を進めます。逆に末期でも痛みがなければ使われません。また癌に限らず手術の後など、一般的な鎮痛剤では痛みがとれないときにも使われます。
モルヒネは苦痛をどう取り除くのか*₃,₂
モルヒネは神経細胞に働き、その表面にある受容体とモルヒネが結合することで、痛みの伝達物質が抑えられます。以前は4時間ごとの服用で、患者の負担を軽くするために少しずつ溶けて効果を発揮するように改良が重ねられました。今では1日に1~2回の服用ですむ徐放剤や3日間効果が持続する貼付剤などがあり、患者の希望に合わせて使われています。
副作用が心配
確かにモルヒネには強い依存性があり、他にもモルヒネを使うことで強い副作用が現れることが心配されます。ここではモルヒネの副作用についてみていきましょう。
呼吸抑制と依存性*₄
モルヒネは延髄の呼吸中枢を抑制し、二酸化炭素に対する反応が低下します。このため呼吸数は少なくなるにも関わらず、本人は息苦しく感じないので注意が必要です。アメリカではモルヒネの使いすぎが問題で、モルヒネやモルヒネと似た薬の過剰投与のために、死亡数が毎年増えているそうです。
呼吸抑制の副作用はまれ
日本は「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」で、医療として使うモルヒネの量が規定されているので、医師は患者の状態をみながら量を決めます。そのガイドラインによると、医療としてモルヒネを使う場合は、呼吸抑制の副作用はまれです。さらに呼吸抑制の副作用が表れる前には眠気が生じるので、その場合は薬の見直しをするように促しています。
また規定内の量であれば、依存性もないそうです。何よりも患者本人が「モルヒネは麻薬でもある」ことを認識して、医師の指示どおりに服用しましょう。
便秘と吐き気*₅
モルヒネの副作用として、主に便秘と吐き気(嘔吐)があげられます。便秘は100%、悪心嘔吐は40~50%の人に表れるそうです。吐き気は症状が出たとしても2週間以内に治まることが多いと報告され、便秘には下剤、吐き気には吐き気止めなどで対処します。
眠気*₄
眠気は4~5日で軽くなることが多く、そもそもモルヒネを使って痛みがやわらいだために、眠くなる場合もあるようです。また、眠気というより意識がもうろうとしている状態のときは、医師の判断で、酸素マスクをつけることやモルヒネの量を調節するなどの対応がとられます。
モルヒネは苦痛を和らげるために脳内でも分泌される*₆
マラソンで走り続けると苦しくなりますが、それでも走り続けて肉体の極限状態が続くと、次第に喜びや満足感、幸福感などにひたるようになるそうです。このとき脳内で分泌されるのが「エンドルフィン」。ここではエンドルフィンについて解説します。
エンドルフィンとは脳内モルヒネの略語
脳内で働く神経伝達物質の1つ、エンドルフィン(endrophine)は脳内モルヒネを意味したもの。正確には内因性モルヒネ(endogenous morpfine)を略しています。ストレスを軽くするために分泌されるエンドルフィンは、モルヒネと同じように神経を鎮静させる作用があり、その効果はモルヒネの数倍だそうです。
死に直面したときも分泌?
エンドルフィンは死期が近いときにも、分泌されるのではないかとされています。つまり、死期が間近になると高齢者は食事や水分をとらなくなり、呼吸状態が悪くなりますが、脳内モルヒネが分泌されて、本人は苦痛を感じないそうです。
最期はやはり「苦しい死」?*₇
未発表の研究の中に人は死が近づくとき、体内ではストレスに関係した化学物質が増えるという研究があります。この状態は感染症にかかっているときと同じ。この研究は未発表のものですが、そもそも死の間際に、脳内モルヒネが分泌されるという研究自体がなされていないと言われています。
水分補給の停止は本人の意思を確認するべき*₈
栄養補給と水分補給は別次元と主張する医師がいます。水分補給の停止は脱水症状が起こるからです。脱水症状は唇や舌の表面などがひび割れて出血し、頭痛を起こすなど本人にとっては辛いはず。医師は患者の意識がはっきりしているときに、脱水症状について十分に説明し、その上でいずれ水分補給を停止してもよいかを確認したほうがよいという主張です。
「穏やかな死」?
動物を脱水と飢餓状態にすると、脳内モルヒネが分泌されるそうです。酸素の取り込みが少なく二酸化炭素が体内にたまるようになると、脳内モルヒネが分泌されるとも言われています。ここでは医療的処置をして最期を迎えた遺体と自然に最期を迎えた遺体の違いについて、納棺師の話を交えながらみていきましょう。
自宅で最期を迎えた遺体と病院から帰ってきた遺体との違い*₉
「納棺夫日記」(著者青木新門)によると、自宅で最期を迎えた遺体と病院から戻ってきた遺体は明らかに違います。1970年代は自宅で亡くなる人が多く、その遺体は枯れ枝のようだったと比喩しているのにに対して病院から戻ってきた遺体は、点滴の注射の痕が痛々しく、体はむくんでいると。まるで生木をさいたようで不自然な印象を受けたという表現です。臨床医も点滴をしていた遺体は、むくんでいるのでみればすぐわかると言います。
まとめ
鎮痛剤としてのモルヒネ。まだまだ麻薬のイメージが強く、モルヒネを使えば中毒症状で廃人になってしまうなどとと不安視されています。WHOは、癌などの強い痛みをうまくコントロールするように提唱していて、実際に薬としてモルヒネを使えば、痛みはやわらぐそうです。ただし、「モルヒネは麻薬」。そのことをよく認識して医師の指示とおりに使うことが肝要です。
一方、死期が近づいたときに分泌されるという脳内モルヒネ。人は食事量が減りさらには水分量も減る最期に近づくと、脳内モルヒネが分泌されると言われています。脳内モルヒネはマラソンなど極限状態が続いたときに分泌されることはわかっていますが、死期と脳内モルヒネの分泌について詳しい研究はなされていません。
医療として使われるモルヒネと脳内モルヒネ。どちらも正しく理解して治療に臨むことが大切です。モルヒネによって痛みや苦痛から逃れることはできますが、その代償もあることは忘れてはいけません。
*1最高の鎮痛剤と言われるモルヒネを十数回ほど利用した体験談
*2がんに関する情報 がん研有明病院
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/treatment/acha/index.html
*3ニュートン2020年7月号「死とは何か」
*4 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年度版
非特定営利活動法人日本緩和医療学会
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_01_09.php
*5厚生労働省e-ヘルスネット(情報提供)ーモルヒネ(もるひね)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-063.html
*6厚生労働省e-ヘルスネット(情報提供)ーβエンドルフィン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-051.html
*7人生の最後の数分間で人は幸福を感じるのか?死の苦しみの向こうに安らぎはあるのか─「その瞬間」の謎に迫る現代科学
*8本人の意思による死の選択 植物状態患者への栄養補給の停止ー星野一正
https://cellbank.nibiohn.go.jp/legacy/information/ethics/refhoshino/hoshino0016.htm
*9最新看取り事情 医療法人ゆうの森
http://www.tampopo-clinic.com/zaitaku/mitori02.html
*大麻草を詳しく解説!鎮痛作用をもたらすモルヒネと大麻の違い
u+(ユープラス)masaの介護・福祉よもやま話 第94回 看取り介護での安楽支援のために
https://www.uchida.co.jp/uplus/kikuchi/20190610.html
再発転移がん治療情報|がんの最先端治療・闘病サポート