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緩和ケアで使うモルヒネは末期癌患者のためだけ?緩和ケアの実態についても解説
緩和ケアとは患者とその家族のためのケア
緩和ケアは癌患者とその家族のためにあります。今回は緩和ケアはホスピスケアとどう違うのか、緩和ケアの具体的な内容と実態について解説します。
緩和ケアという言葉のほうが使われている
緩和ケアは癌を直接に治療するのではないので、緩和ケアだけで癌が治るわけではありません。ここでは緩和ケアの目的とホスピスケアについてみていきましょう。
緩和ケアはさまざまな苦痛を取り除く
癌にかかると身体の痛みや吐き気、だるさ、精神的には「死」を突きつけられたような恐怖心、経済的な不安など、さまざまな苦痛が生じます。こうした苦痛を緩和して、患者と家族のQOL(Quality of Life)を維持・向上させることが目的です。
「緩和ケア」と「ホスピスケア」、言葉の使い分けは曖昧
「ホスピスケア」よりも「緩和ケア」のほうがよく耳にします。緩和ケアは早期からの癌患者と家族のケアが目的、一方、ホスピスケアは余命短い患者と家族の苦痛を減らすためのケアとされています。
しかし、緩和ケアとホスピスケアの言葉の使い分けは厳密ではなく、ホスピスケアより緩和ケアという言葉のほうが使われることが多いようです。
緩和ケアは患者の痛みだけでなく家族の精神的苦痛もやわらげる*₁
緩和ケアには、痛みをとるケアのほかにさまざまなケアがあります。ここでは緩和ケアは、実際にどのようなケアがあるのかを解説します。
早期からの緩和ケアで生存期間が長くなる?
早期から定期的に緩和ケアを受けていた人のほうが生存期間も長かったという報告があります。その報告ではうつ病などの症状も少なかったそうです。
これは必要なときだけ緩和ケアを受けていた人と比較した場合で、少なくとも緩和ケアで生存期間を縮めることはないようです。
痛みをやわらげるモルヒネ*₂
モルヒネは、医療では鎮痛剤として使われます。癌の辛い症状として主にあげられるのが、痛み。しかしモルヒネは麻薬のイメージが強く、使うことに抵抗を感じる人が多くいます。中毒になって廃人になるのではないかなどが、その理由。
実際は、医療麻薬で痛みを抑えながらのほうが治療効果が出ると言われています。痛みはかなりのストレスを与えるようです。
モルヒネは「麻薬」。そのことはよく認識して、医師の指示とおりに使うことが基本です。
また、モルヒネの副作用として稀に呼吸数が減ることがあげられます。呼吸数が減る前に眠気が生じるので、眠っているときに呼吸数が少なくなっていないか注意が必要。
痛み以外の苦痛にも緩和ケア
緩和ケアは、食事を楽しむことや排泄など、穏やかな生活を戻せるようにケアをします。また身体だけでなく、心が辛いときも緩和ケアが必要。治療による苦痛や経済的な不安などは、患者や家族で解決することだと思ってしまいがちです。
しかし患者や家族のさまざまな苦痛に対応できるように、緩和ケアチームには医師と看護師のほかに、心理職やリハビリ担当の理学療法士、栄養士もいます。
緩和ケアは自宅でも受けられる
以前は緩和ケア病棟で看取ることが多く、患者にとっても緩和ケア病棟は「死を待つところ」という認識が強くありました。緩和ケア病棟に入院した途端生きる気力を失った患者もいたそうです。
緩和ケア病棟では、痛みや呼吸の辛さをやわらげるために放射線をあてることや食欲が出るように治療します。辛い症状がやわらげば退院も可能。また緩和ケアは病院や自宅でも受けられます。在宅で緩和ケアを受けたいときは、自宅近くに緩和ケアできる医師がいるのかの確認が必要なので、「がん相談支援センター」などで相談してみましょう。
緩和ケアの実態*₃
緩和ケアは2002年WHOの定義が変更されたことにより、癌の早期からでも受けられるようになりました。緩和ケアが始まってからまだ日が浅いとも言え、実際、緩和ケアの改善点は少なからずあります。ここではその改善点をみていきましょう。
亡くなる1か月前に痛みがあったと3割が回答
緩和ケアを受けていても、痛みを完全に取り除くことは難しいようです。
国立研究開発法人国立がん研究センターが、全国の癌患者の遺族などを対象にした調査があります。癌がだけでなく心疾患、肺炎、脳血管疾患、腎不全を対象としていますが、亡くなる1か月前に苦痛があったという回答は3割ほど。精神的辛さを感じていた人も3割ほどいたそうです。
亡くなる1週間前に強い痛みがあった患者は3割弱
同調査では、1週間前にも3~4割の患者が痛みや身体的苦痛、精神的辛さがあったと回答しています。これを受けて国立がんセンターは、治療や緩和ケアの対策が必要としています。
緩和ケアは患者の希望通りではなかった?*₄
緩和ケアの開始が患者の希望より遅かったのではないかという調査報告があります。これは東京都が行った患者や医師を対象にして行った「がん医療等に関わる実態調査」によるもの。また緩和ケア病棟は「お金がかかる」「希望してもすぐに入院できない」という声が多くあげられていました。家族へのケアも、まだ十分ではなかったようです。
在宅で看取るときの留意点*₅
状態が安定すれば緩和ケア病棟を退院できるようになった昨今。住み慣れた家で治療を続けたいと考える人は多くいます。ここでは当事者の思いに寄り添うための留意点をあげてみましょう。
環境や福祉制度、一時的に入院できる病院があるかを確認
自宅で療養を考えるときは、まず家族は看護をできる環境にあるかどうかです。特に人間関係。患者と看護する人との関係が良くないときは双方にストレスがたまります。看護で関係が修復されることもあり、双方に関係を修復したい気持ちがあるかどうかのようです。
また訪問看護など地域の福祉制度がどこまで対応しているかでも、判断は分かれます。
体調が悪くなったときや家族に疲れがたまったときは、一時的に入院できる病院や施設はあるか、なども検討しておきましょう。
まとめ
癌患者が、早期から取り組むようになった緩和ケア。国立がんセンターの調査では概ね患者からの満足は得られているものの、まだ医療側に改善を求める内容の報告がありました。
とはいえ自身の痛みや治療のことを、まずは率直に医師に伝えられるような関係づくりが必要なようです。医師の指示に従わないで自己判断したため状態が悪くなってしまうことがあります。逆に医師の言うことは何でも正しいとして、鵜呑みにするのも問題。言いにくくて黙ってしまうこともありがちです。
家族や周囲の一番の仕事は、当事者の痛みや不安などを医療従事者に代弁することかもしれません。
*1緩和ケアについて知ろうーがん情報みやぎ
*2 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年度版 非特定営利活動法人日本緩和医療学会
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_01_09.php
*3がん患者の人生の最終段階における苦痛や療養状況に関する初めての全国的な実態調査の結果を公表
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1226/index.html
*4東京都がん医療等に関わる実態調査
*5自宅および緩和ケア病棟で看取りを経験した 遺族の精神的負担とその対処方法に関する質的研究ー京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程井藤美由紀
https://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/report_2008/2008-f1.pdf