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心停止が先か各臓器の機能低下が先か?死にゆくときの心臓と脳の関係を解説

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心停止に向かっていく心臓の動きは各臓器と心臓の相関関係で決まる

人はそれぞれの臓器などが老化し、いずれ生命を維持できなくなり死を迎えます。臓器の機能低下は細胞の老化によるもの。細胞が老化するのは、細胞には死がプログラムされているからだそうです。今回はそれぞれの臓器と心臓の動きについて解説します。

それぞれの臓器の機能低下が招く心停止

1つの臓器の機能低下は全身に影響していき、やがて心臓は停止。ここではそれぞれの臓器の機能低下は、心臓にどのような影響を与えるのかをみていきましょう。

肺の機能が落ちれば呼吸停止

肺の機能が落ちると呼吸は停止します。呼吸が停止すれば血液中の酸素が不足するため、心臓は停止。

人体に必要なカリウムが多すぎても少なすぎても心停止

人体には人体に必要とされるミネラルがあり、カルシウムやナトリウムがよく知られています。またカリウムもその1つ。

カリウムはそのほとんどが細胞内に存在し、血液中には微妙な範囲内で維持されるようになっています。血液中のカリウムが多すぎたり少なすぎると、細胞内のカリウムで調節するわけです。

腎臓の機能低下で心停止

ところが腎臓の機能が低下すると血液中のカリウムが増えてしまいます。そうなれば心筋の働きが悪くなるため心臓は停止。(カリウムは体内ではイオンとして存在)

消化管が原因で心停止も

激しい下痢や嘔吐が続いた場合、血液中のカリウムが減ってしまいます。カリウムが減ると不整脈をおこし、心臓は停止。

肝臓の機能低下で心不全がおこる

肝臓は栄養を蓄え、毒を分解するなどの働きがあります。このため肝臓の機能低下が著しい場合も心臓には悪影響。

たとえば肝硬変になると血管を拡張する一酸化炭素などが取り除かれないため、心不全をおこすとされています。

脳幹が機能しないと呼吸や心臓は止まる

「死の三兆候」として心拍の停止、呼吸の停止、瞳孔反応の消失があげられますが、これらの機能を司っているのが脳幹。脳幹は生命維持にかかせない脳の一部です。脳幹の機能が低下すれば呼吸や心拍は停止し、生命を維持できません。

突然停止する心臓疾患

日本の死因の第2位が心疾患です。元気に過ごしていても、心臓が突然停止して亡くなった人は年間7万人超。ここでは主な心臓の病気をみていきましょう。

血管がふさがる心筋梗塞

心臓の血管が詰まって栄養や酸素が送られなくなるために、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。

血管が詰まる原因は動脈硬化。血管の内側にコレステロールなどが付着していくことで血管がふさがれてしまうようになります。血液の流れが悪くなったところの心臓の組織が壊死すれば、機能低下。

心臓の動きが弱くなれば十分な血液を全身に送れません。それぞれの臓器は機能低下するため心臓にはさらなる負担。やがて心臓の動きが停止します。

心臓が痙攣(けいれん)する心室細動

心室細動とは、心臓が痙攣して細かく震える状態のこと。心臓の収縮する動きがないため、全身に血液が送られなくなります。心室細動は心停止の一種とも言われるそうです。

心停止後の脳の活動は一旦活発になる?

心停止後、脳内での活動を研究した報告があります。ここでは2つの説をご紹介します。

心停止後30秒間は脳は活動しているという説

心停止後、脳は30秒程度活動しているとされています。これは2013年ミシガン大学のラットを使った研究発表によるもので、知覚や意識に関連した脳波が強く表れたそうです。

このことから臨死体験を科学的に説明できると主張していますが、測定した脳のごく一部でしかこの脳波がみられなかったという点で反論されています。

死の直後に脳の信号が出るという説

死の直後、「本当の死」を表す信号が脳内に出るという発表があります。これは2018年ドイツでドレイアー博士らが、脳死患者9人について脳の活動を記録した研究によるもの。心臓の動きが停止すると脳波は平坦になります。このときニューロン(神経細胞)の活動は脱分極の信号がみられるそうです。

つまりニューロンの内外の電位差がプラスに傾くことで、ニューロンが壊れ始めていきます。そして次々と壊れ、こうなるともはや回復不可能。ドレイアー博士はこの信号は「死につながる最終的な変化の始まりかもしれない」としていますが、確証はされていません。

心停止の後に脳細胞の死が始まる

脳は酸素が送られなくなると、数分で死ぬと言われています。しかしそうではなかったという研究があります。

数分で脳細胞が死ぬという説が一般的

心臓が停止すると、血液循環が止まり脳は酸素と栄養を受け取れなくなります。そうなるとニューロンの電気的バランスが崩れて、大量のカルシウムイオンがニューロンの中へ流入。ニューロンは死んでブヨブヨとふくらんでしまいます。

つまりニューロンへ送られる酸素と栄養がとだえると、数分でニューロンは死んで回復不可能という説が一般的です。

死後4時間経ったブタの脳が再生された!*₁

米イエール大学でブタの脳に機器をつなげて酸素と薬剤を送ったところ、ブタの脳の一部が再生したという報告です。研究者は実験の行い方そのものにも倫理的な問題があったかもしれないが、神経の接続が部分的に回復したと主張しています。

この研究報告は、脳は死ぬと回復不可能と言われている通説に異を唱えることになります。また今後、生と死の境について議論されることやアルツハイマー病などの新たな研究に期待できるようです。

まとめ

心臓が停止すれば血液循環が止まり、脳に酸素や栄養がいかなくなり、脳細胞は死に始めます。逆に脳、つまり脳幹が機能しなくなれば心臓や呼吸が止まります。また肺や腎臓などの臓器が機能しなくなれば、心臓もやがて停止します。

人の生命維持には心臓、脳、肺、消化器が密接に関連していて、死にゆくときもまた密接に関連していることがわかります。人の体は絶妙にできていると言わざるを得ません。

とはいえ死に関しては、断言できるほど解明されていないようです。

出典:ニュートン2020年7月号「死とは何か」

*1死後4時間たったブタの脳、一部再生に成功=米研究・BBCニュース

https://www.bbc.com/japanese/47971724

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