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死の三兆候でも「死」が確定するわけではない理由とは?死の三兆候について解説!

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死の三兆候とは「死」を判断する3つの経験則

死の三兆候とは「心停止」、「呼吸停止」、「瞳孔反応の消失」のことで、対象の人間が死んでいるかどうかの判断に用いられる基準です。実は、かつて「心停止」と「呼吸停止」だけの二兆候だった頃もありましたが、「死者が蘇る」など確定的な死の判断とは言えない状況でした。

やはり二兆候よりも三兆候のほうが「死」をより正確に判断できます。しかし実はこの三兆候はあくまでも経験則でしかありません。

では、なぜここまで死の三兆候が信頼され、そしてこの3つの兆候がみられることが死を意味するようになったのか。今回はそんな「死の三兆候」についてみていくことにしましょう。

死の三兆候*1

人間は心臓が停止してから5~10秒後に意識がなくなります。30~60秒後には呼吸停止、瞳孔が散大。このように人間は心停止から時々刻々とあらゆる機能が停止ないし機能不全になっていきます。

ではいつの時点で人間は「死んだ」と判断されるのでしょうか。それは当然ながら人間によって「死んだ」と判断された時であり、この判断に用いられるのが「死の三兆候」です。ここでは人間の死を意味する3つの兆候についてそれぞれ説明していきます。

①心停止したとき

心停止とは、心臓の動きが停止することです。心電図では波がみられず、平坦になります。心停止すれば体への血液の循環が著しく低下ないし停止し、各細胞への酸素の供給が止まり、脳細胞の死滅が始まります。肉体自体も動くことはなく、当然脈もありません。

心室細動とは?

心停止と同じようにみなされる心室細動。心室細動は心臓が痙攣している状態のために、正常な拍動はなく、心臓から血液は送り出されません。心臓が停止してるわけではなく、痙攣している状態ですが、人体にとって心停止とほぼ同じような状態に陥っていることになります。このように、心室細動を起こしている人に遭遇したときはAEDによる適切な処置が必要になります。

②呼吸停止したとき

呼吸停止とは正常な呼吸が停止することです。正常な呼吸をしているかどうかについて、ドラマや映画などでは口元に手をかざすなどで呼吸の有無を確かめようとしていますが、実際には胸や腹部の動きで確認します。動きがないときは呼吸していないと判断します。

心室細動のときの呼吸

心室細動のときに顎をしゃくりあげ、口や頭が動くことがあります。またうめき声が出ていることがあります。一見すると呼吸をしているように見えますが、実は違います。この状態を死戦期呼吸と言い、死戦期呼吸は呼吸として体内に酸素を取り込めていない状態です。呼吸停止とは若干異なりますが、呼吸として機能していないという点で、AEDなどによる適切な処置が求められるシチュエーションと言えるでしょう。

③瞳孔反応の消失したとき

瞳孔反応の消失とは、瞳孔が散大して対光反射が消失することです。反射は脳機能によって意識を介さずに直接体の各部位に働きかけるもので、この反射が停止しているということは脳の機能も停止していると推察できます。つまり、瞳孔反射がないことから脳が機能していない、よって死んでいると判断されています。

死の三兆候はあくまでも経験則

医師が死の三兆候を確認すると死亡宣告をしますが、実はそれだけで死が確定されるわけではありません。ただしくは、死の三兆候がある一定時間続くことで、死亡が確定します。

このように、死の三兆候は科学的に死を確定できる基準ではありません。「蘇生する可能性がない」という長い医学の経験による経験則と言えます。

死の三兆候は人間が人間の死を判断するための経験則であり、実のところ人間の「死」はまだ科学的にはっきりと定義できていません。

言い換えると、この死の3つの兆候は、人間が「死」というよくわからないものと向き合い続けた結果に編み出した知恵です。当然、これまでには間違った死の判断もありました。

「死人が生き返った!?」18世紀ヨーロッパで広がった恐怖

18世紀のヨーロッパでは「死亡」という診断が間違っていたという事態が度々ありました。葬儀のときに「死んだはず」の人が目をさました、という「黄泉がえり」が繰り返し起こったのです。

要するに死んでいなかった、生きていたというわけです。当時の死亡判定の基準は「心停止」と「呼吸停止」の2つのみ。加えて心電図や聴診器がなかったために、こうした誤診が起こったのです。死の判定は埋葬だけでなく相続などにも影響を及ぼすため、死の判定が曖昧というのは社会的に大きな問題となりました。

日本では24時間以内の火葬は禁止

日本では墓地埋葬法第3条により医師の死亡判断後、24時間以内には火葬できないことになっています。なぜ24時間待たないと火葬できないのか、その理由をみていきましょう。

「24時間以内の火葬の禁止」は蘇生の可能性があるため

医療技術が進歩した現代では、医師が仮死状態を死と判断してしまうことは考えにくくなりました。それでも蘇生の可能性がないとはいえないそうです。

死の三兆候は、科学的に死とみなせるわけではないと前述しましたが、死の三兆候がみられた後、蘇生する可能性がないことを確認するために一定の時間が必要です。日本はこれを法律で24時間と定めています。

感染症や24週未満の胎児は例外

24時間以内の火葬が禁止されているものの、例外も存在します。それは感染症で死亡した場合と24週未満の死産した時です。感染症によって亡くなった人は、周囲への感染予防のために24時間以内に火葬されます。

24週未満の胎児もまた同様に例外として24時間以内の火葬が許可されています。逆に24週以降の胎児に関しては24時間の安置が必要とされています。

蘇生の可能性はいつまであるのか?

死斑が出現して固定されるまでに20時間以上かかるとされています。死斑とは血液がたまって皮膚が変色すること。また死後12時間経てば全身に硬直がみられ、5時間経てば体温が低下して体が冷たくなります。

死斑がみられることや体が冷たくなること、また死後硬直を死体現象といいますが、死体現象がみられれば死は確定です。

心情的な理由も

故人を送り出す側には、心の準備のために時間が必要です。「別れ」をすることは、その後の心理状態に大きな差が生じるとされています。24時間の安置は死を確実なものとするための措置であるとともに、残された遺族への心理的な配慮も兼ねているようです。

まとめ

死の三兆候はあくまでも経験則によるもの。死をはっきりと定義できる科学的な境界線はまだありません。世界では脳死を死として捉える国が多いのですが、脳死状態が数十分経過した後に目を覚ましたという報告があります。

一方、臓器提供に関して言えば、脳死状態のうちに臓器を取り出さないと移植希望者に提供できないと言われます。日本では、死の三兆候が確認されてからの24時間という「時間」が「死」を確定するために必要とされています。

どういう観点で「死」を定義すればいいのか、もう少し科学的な根拠が求められるようです。とはいえ送り出す側には、やはり「時間」のほうが必要なのではないでしょうか?

出典:ニュートン2020年7月号「死とは何か」

*1胸部・脈系の異常 心停止

http://184.73.219.23/worldpl/03_shojo/03_03_01.htm

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